訪問看護を開業・経営する

2026.04.23

訪問看護ステーションの倒産・廃業率の実態と安定経営のポイント

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訪問看護データ

こんにちは。 利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの早川あかりです。

 

訪問看護ステーションの開設数は年々増加しています。

その一方で、倒産・廃業に追い込まれるステーションも増えており、開業を検討されている方の中には不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、訪問看護ステーションの倒産が増えている理由と廃業率の現状、今後の経営環境、そして廃業を決める前に試してほしい安定経営のポイントを詳しく解説します。

この記事を書いた人

看護師早川 あかり

病棟、施設、クリニックで様々な場面に遭遇してきました。検査・手術・処置を経て退院なさる患者さんが、その後どのように暮らしていかれるものか。もっとお一人おひとりに深く長く寄り添いたいと考えるようになり飛び込んだのが訪問看護ステーションでした。

利用者様が住み慣れた場所でご家族と1日でも長く、その人らしく、笑ってお過しいただけるよう、より良いケアを提供できるよう、日々スタッフ全員で業務に取り組んでいます。

訪問看護ステーションの開業を目指す方々とお話しすると、「本当に続けていけるのだろうか」「倒産したらどうしよう」という不安の声を、少なからず耳にします。
統計を見ると、2024年度だけで886件が廃止となっており、その現実を正直に伝えることにはためらいもありました。
でも、数字と向き合うことが、長く続けられる経営の第一歩だと思っています。
開業初期の資金不足、採用の難しさ、利用者獲得の…これらは多くのステーションが経験する共通の課題です。
経営が厳しい局面でも、早めにサインに気づき、一つひとつ手を打っていくことで、道は開けていきます。
廃業を考える前に、ぜひこのコラムでご紹介した改善策を試してみてください。
地域に必要とされるステーションをつくりたいという想いがある限り、私たちSOYもその歩みを応援しています。

訪問看護ステーションの倒産が増えている理由や廃業率

訪問看護の利用者数は増加傾向にあり、在宅医療への需要は高まり続けています。

しかし、新規参入が増える一方で、経営が立ち行かなくなるステーションも後を絶ちません。

 

まずは、廃業率の実態と、倒産・廃業につながる主な理由を整理しましょう。

 

廃業率の現状

一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、2025年4月1日時点の全国の訪問看護ステーション稼働数は18,754件に達し、前年から1,425件増加しています。

 

また、2024年度の新規開設数は2,487件と2,000件を超え、在宅医療の需要拡大に伴い、参入の活発化がうかがえます。

 

一方で、同年度の廃止・休止件数もそれぞれ過去最多を更新しており、開設数の増加と同時に撤退するステーションも増加。

 

2024年度の廃止数は886件で、期首のステーション数17,329件から算出すると廃業率は約5%。

休止を含めた休廃止数は1,241件で、全体の約7%が市場から退出している計算となり、一定数のステーションが経営継続に課題を抱えていることがわかります。

 

訪問看護ステーションが倒産・廃業する主な理由

経営難に陥る背景には、さまざまな要因が重なっています。

 

人件費の高騰と採用コストの問題

訪問看護は労働集約型のビジネスであり、売上に占める人件費の割合が高い業種です。
この割合が一定水準を超えると、赤字に転じるリスクが高まります。

 

さらに、看護師の確保が難しい場合には人材紹介会社への依存が進み、紹介料が人件費を押し上げる要因に。
採用コストの増加は、特に開業直後の経営に大きな影響をおよぼします。

 

運転資金の不足・利用者獲得の難しさ

開業直後は利用者数が少なく、収益が安定しにくい一方で、家賃や人件費といった固定費は継続して発生します。
そのため、資金不足や利用者を十分に確保できないことから、黒字化できないまま閉所に至るケースも見られます。

 

初期段階における利用者獲得と資金計画が、経営の明暗を分けるポイントです。

 

小規模運営による収益の不安定さ

多くのステーションは、少人数での小規模運営からスタートします。
利用者数が限られている場合、1名の利用終了だけでも収入が大きく変動し、経営が不安定になりやすい傾向があります。
事業規模が小さいほど固定費の負担が重くなり、安定経営に至るまでに時間を要するケースも少なくありません。

 

移動ルートの非効率

訪問看護は利用者様のご自宅を1件ずつ訪問するため、エリアが広すぎると移動時間が増え、1日あたりの訪問件数を確保しにくくなります。
訪問ルートが最適化されていない場合、スタッフの負担増と収益性の低下が同時に生じ、結果として経営を圧迫する要因となります。

 

 

訪問看護ステーションは今後さらに厳しくなる?

訪問看護

今後の訪問看護経営を考える上で、避けて通れないのが診療報酬改定の動向です。

 

2026年度の診療報酬改定は、本体部分の改定率が+3.09%と、1994年度以来の大幅なプラス改定で、2026年6月から施行されます。

しかし、この数字だけを見て、追い風と捉えるのは危険です。

 

改定の方向性を整理すると、訪問看護ステーションには、より高い専門性・より大きな規模・より明確な成果が求められる流れとなっています。

経営が厳しくなる可能性をしっかり把握した上で、準備を進めることが重要です。

 

「件数」から「質・成果」への転換

これまでの訪問看護は、訪問回数を積み重ねることで収益を確保する構造でした。

しかし、今回の改定では、重症者への対応力や急変予防、多職種連携による成果が評価される方向へと転換しています。

 

訪問の数ではなく、内容と結果が問われる時代へとシフトしており、ケアの根拠を記録・説明できない事業所は、評価を得にくくなる可能性があります。

 

体制・規模を求める加算設計

例えば今回新設された「機能強化型訪問看護管理療養費4」は、常勤看護師4名以上、24時間対応体制、重症者や精神障害者への実績などを要件としています。

このように、高い報酬を得られる区分ほど大きな人員体制と専門的な実績が必要で、小規模・汎用型のステーションが上位区分を算定するのは難しい設計となっています。

 

規模拡大や専門化に取り組めていない事業所は、報酬上の恩恵を十分に受けられないリスクがあることも覚えておきましょう。

 

人材確保の競争はさらに激化する見通し

今回の改定では、賃上げ対応が主要な柱となっており、医療・介護業界全体で処遇改善が進む見込みです。

しかし、改定で見込まれる収入増を賃上げに充てなければ人材を確保できない一方で、賃上げを行えば人件費率がさらに上昇するという、経営上のジレンマも生じます。

 

厚生労働省の試算では、2025年時点で最大約27万人の看護師不足が生じるおそれがあるとされており、採用競争の激化は今後も続くと見込まれています。

 

このように、2026年度改定は一部の事業所にとっては追い風となる一方で、対応できないステーションとの格差を広げる選別の改定ともいえます。

 

改定内容は、告示まで変更される可能性があります。
中医協の審議内容や診療報酬の最新情報は、以下の厚生労働省公式ページで随時ご確認いただくことをおすすめします。

 

厚生労働省:中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会)

厚生労働省:診療報酬関連情報

 

 

訪問看護ステーションを安定経営するには?

倒産や廃業を防ぐためには、経営が悪化する兆候を早めに捉え、適切に手を打つことが重要です。

 

ここでは、経営上の問題が深刻化する前に見られやすいサインと、廃業を判断する前に取り組んでおきたい改善策をご紹介します。

 

経営悪化の前に現れやすいサイン

経営が厳しくなる過程では、次のような状況が見られることが少なくありません。
下記の中で当てはまる項目があれば、早めに経営改善を検討することが大切です。

 

  • 月ごとの訪問件数が伸び悩み、収益で固定費を賄えない状態が続いている
  • スタッフの離職が重なり、人材紹介会社への依存が高まっている
  • ケアマネジャーや医療機関からの新規依頼が減少している
  • 運転資金が減少し続け、3カ月先の資金繰りの見通しが立たない

 

廃業を決める前に試してほしい改善策

訪問看護ステーションの経営が厳しくなり廃業を決める前に、まずは下記の内容を試してみることをおすすめします。

 

利用者獲得に向けた関係構築の強化

医療機関やケアマネジャー、地域包括支援センターとの連携を深め、信頼関係を築くことが安定した依頼につながります。
日常的に顔の見える関係が、継続的な紹介獲得の基盤となるでしょう。

 

サービスの質の向上

看護の質は利用者様やご家族の満足度に直結し、紹介や口コミによる利用者増加にもつながります。
定期的な研修や症例共有を通じて、チーム全体の対応力を継続的に高めていきましょう。

 

ICT活用による業務効率化

電子カルテの導入や記録のデジタル化は、事務負担を軽減し、1日あたりの訪問件数の確保につなげることができます。
ICTの活用は2026年度改定でも評価される方向にあり、早期の取り組みが経営上の強みとなります。

 

コスト構造の見直し

備品や消耗品、光熱費などの支出を定期的に見直し、無駄を削減することで利益率の改善が期待できます。
小さなコスト削減の積み重ねが、資金繰りの安定に大きく寄与します。

 

専門性の高いサービスによる差別化

精神科訪問看護や難病対応、終末期ケアなど、特定の分野に強みを持つことで、地域の医療機関から選ばれる存在になります。
地域にとって必要不可欠なステーションとして認知されることで、安定した依頼の確保につながります。

 

訪問ステーションの開業成功のポイントや流れについては、下記のコラムもあわせてご覧ください。

 

訪問看護の事業計画書の作り方を解説!開業成功のためのポイント

訪問看護ステーション立ち上げを成功させる!基準・流れ・資金のポイント 

訪問看護ステーションの開設基準を紹介!開設の流れも

訪問看護ステーション開業を支える資金調達方法を解説!

訪問看護ステーションの立ち上げに利用できる助成金・補助金をご紹介!

 

 

訪問看護の倒産・廃業率の現状を知り、安定経営を目指そう

訪問看護は需要の拡大に伴い参入が増える一方、倒産・廃止・休止も増加しており、2024年度の廃止は1,241件にのぼります。

 

特に開業初期は、人件費や採用コストの負担、利用者獲得の遅れ、資金不足などが重なり、経営が不安定になりやすい傾向があります。

小規模運営や非効率な訪問ルートも収益悪化の要因です。

 

さらに2026年度の診療報酬改定では、質や成果、体制・規模が重視される方向へとシフトし、小規模事業所には厳しい環境が予想されます。

 

安定経営には、早期に経営悪化の兆候を捉え、関係機関との連携強化やサービスの質向上、ICT活用、コスト見直し、専門性の確立などに取り組むことが重要です。

 

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