
こんにちは。 利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの早川あかりです。
一人暮らしの高齢者が認知症を発症した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
また、活用できる支援サービスや制度にはどのようなものがあるのか、事前に知っておきたいと考える方も多いのではないでしょうか。
今回は、認知症のある高齢者が一人暮らしを続ける上でのリスクや限界のサイン、利用できる支援サービス・制度、ご家族ができるサポートについてわかりやすく解説します。
目次
認知症になったら一人暮らしはできるもの?課題とリスクを解説
一人暮らしの高齢者が認知症を発症すると、ご本人も気づかないうちに症状が進行してしまうケースも少なくありません。
厚生労働省の「2024年 国民生活基礎調査」によると65歳以上の方がいる世帯全体のうち、単独世帯(一人暮らし)は約903万1,000世帯。
65歳以上を含む世帯の32.7%を占めています。
今後も、一人暮らしの高齢者は増加していくと予測されており、認知症と一人暮らしの問題は身近なテーマになっています。
認知症の方が一人暮らしを続ける場合、日常生活の中でトラブルや危険な出来事、困りごとが増えてきたら、一人暮らしの継続が難しくなっているサインと考えられます。
状況によっては命に関わることもあるため、早めに医療機関や地域包括支援センターへ相談し、介護サービスの利用や生活環境の見直しを検討することが大切です。
認知症を抱えながら一人暮らしを続ける中で起こりやすい変化とそのリスクを見ていきましょう。
家事や火の管理が難しくなる
認知症が進行すると、記憶力や判断力の低下によって、調理中や暖房使用中の火の管理が難しくなることがあります。
例えば、コンロの火を消し忘れたり、調理の途中で別の行動に移ってしまったりするケースです。
ご本人が異変に気づけないまま火災につながる恐れがあるため、特に注意したいものです。
喫煙習慣がある場合は、タバコの不始末による出火にも注意が必要です。
外出時の不安やトラブルが増える
認知症の代表的な症状の一つに「見当識障害」があります。
時間や場所がわからなくなることで、外出先から帰宅できなくなったり、交通事故に遭ったりするリスクが高まります。
一人暮らしの場合、異変に気づく人が近くにいないため、発見や対応が遅れやすい点も課題です。
服薬や食事の管理が負担になる
「薬を飲んだかどうか」がわからなくなり、飲み忘れや重複服用が起こることがあります。
また、食事の準備が難しくなり、栄養が偏ったり、傷んだ食品を食べてしまったりすることも。
こうした変化は持病の悪化や体調悪化につながり、生活全体の安定を崩す要因にもなります。
お金や契約の管理が難しくなる
判断力や記憶力の低下により、お金の管理が難しくなることがあります。
家賃や光熱費の滞納につながるほか、訪問販売や詐欺の被害に遭いやすくなる点にも注意が必要です。
また、認知症の症状として現れることがある「物盗られ妄想」によって、家族や支援者との関係が悪化してしまうこともあります。
地域との関係が希薄化・悪化する
認知症が進行すると、ごみ出しのルールや分別を守ることが難しくなったり、物をため込む行動が見られたりすることがあり、住環境の悪化から近隣トラブルにつながることがあります。
こうした状況が続くと地域との関係が希薄になり、必要な支援を受けにくくなる恐れもあります。
認知症になる前にできることと活用可能な支援サービス・制度

「一人暮らしをしている親に認知症の兆しを感じる」など、将来に備えて早めに準備をしておきたいと考えるご家族も多いのではないでしょうか。
ここでは、認知症になる前にしておきたい準備と、活用できる主な支援サービス・制度についてご紹介します。
認知症になる前にしておきたいこと
認知症になる前に、下記の準備をしておくと安心です。
家族間で情報や役割を共有しておく
配偶者や兄弟、親戚などと親御さんの今後について話し合い、介護の中心となる人を決めておくことが大切です。
誰が各種手続きを担当するのか、介護費用をどのように分担するのかなどを事前に整理しておくことで、緊急時にも落ち着いて対応しやすくなります。
また、ご本人の財産管理に備えて、任意後見制度や成年後見制度についてあらかじめ理解しておくと安心です。
かかりつけ医や相談窓口を確認しておく
もの忘れや判断力の低下など、認知症の初期症状が見られた際にすぐ相談できるよう、かかりつけ医の連絡先や地域包括支援センターの窓口を事前に確認しておきましょう。
早めに受診して診断を受けることで、介護認定の申請や必要な支援サービスの利用につなげやすくなります。
活用できる支援サービス・制度
認知症に関する支援制度には、介護や医療、生活支援などさまざまな種類があり、ご本人の状態や生活環境に応じて活用できます。
介護保険サービス
介護保険サービスは、要介護認定を受けた方が利用できる制度です。
訪問介護やデイサービス、ショートステイなど、さまざまなサービスを利用できるほか、介護に関する相談や住宅改修費の補助を受けられる場合もあります。
まずは、かかりつけ医や自治体の窓口で、要介護認定の申請について相談してみましょう。
訪問看護
訪問看護とは、医師の指示に基づき、看護師が利用者様のご自宅を訪問して医療的ケアや生活支援を行うサービスです。
認知症の方も利用することができます。
訪問看護を利用している方は60歳以上が多く、認知症を抱える利用者様も少なくありません。
看護師が専門的な視点で体調や行動の変化を丁寧に観察し、異変の早期発見につなげます。
また、服薬管理や生活リズムの維持、食事・睡眠状況の確認など、日常生活を安定して送るためのサポートも行います。
ご家族に対して、接し方や介護方法についての助言・相談対応を行なっている点も特徴です。
「住み慣れた自宅でできる限り生活を続けたい」というご本人の思いに寄り添いながら支援できることは、訪問看護の大きな役割といえるでしょう。
なお、訪問看護は医療保険と介護保険の両方に対応していますが、要介護認定を受けている場合は、原則として介護保険が優先して適用されます。
認知症の訪問介護については、下記コラムもご覧ください。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、全国の市区町村に設置されている高齢者向けの総合相談窓口です。
保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが連携し、認知症が疑われる方やそのご家族に対して、受診先の案内や介護手続きの相談、地域の支援制度の紹介などを行なっています。
「何から始めればいいかわからない」という段階でも相談しやすい窓口です。
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業は、認知症などで判断能力が十分でない方を支援するために、社会福祉協議会が実施しているサービスです。
スタッフが定期的に訪問し、福祉サービスの利用手続きや金銭管理、重要書類の保管などをサポートします。
ただし、利用契約は原則としてご本人が行う必要があり、ご家族だけの判断では利用できない点に注意が必要です。
認知症初期集中支援チーム
認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる方やそのご家族を支援する公的な仕組みです。
医療・介護の専門職が自宅を訪問し、認知症の状態確認やご家族への助言、必要な医療・介護サービスへの橋渡しなどを、おおむね6カ月間集中的に行います。
主に、医療や介護サービスをまだ利用していない方や、利用が中断している方が対象です。
利用を検討したい場合は、まず地域包括支援センターへ相談してみましょう。
認知症で一人暮らしを続けるなら、こんなサポートを
支援サービスに加えて、ご家族による見守りやサポートを組み合わせることで、認知症の方が安心して一人暮らしを続けやすくなります。
サービス以外でご家族ができる具体的なサポートをご紹介します。
定期的なコミュニケーションで孤立を防ぐ
一人暮らしの高齢者は、日常的な会話の機会が減り、社会的に孤立しやすくなる傾向があります。
電話や訪問などで定期的に連絡を取り合い、継続的なコミュニケーションを意識することが大切です。
人との交流は脳への刺激につながるとされており、孤立を防ぐことは、認知症の進行予防の観点からも重要と考えられています。
食事支援と生活環境を整備する
食事の準備や栄養管理が難しくなってきた場合は、高齢者向けの配食サービスを活用するのも有効です。
また、転倒やケガを防ぐために室内の危険箇所を確認し、生活しやすい環境へ整えていくことも大切なサポートです。
介護保険外サービスを組み合わせる
家事代行サービスや見守りカメラ、配食サービスなどを組み合わせることで、日常生活を幅広く支えられます。
自治体によっては安否確認や見守りサービスを実施している場合もあるため、事前に相談窓口へ確認しておきましょう。
一人暮らしの認知症は早めの備えと支援活用が大切
認知症の方が一人暮らしを続けることは、状況によっては十分に可能です。
ただし、生活の中で少しずつ困りごとやリスクが増えていくため、それをどのように支えるかが重要になります。
日常生活で危険な出来事が増えた場合は、一人暮らしの継続が難しくなっているサインかもしれません。
早めに医療機関や地域包括支援センターへ相談し、介護保険サービスや訪問看護などを活用することが大切です。
ご家族による訪問や見守りなどに加え、配食サービスや家事代行などを組み合わせて支えることで、認知症の方が住み慣れた自宅で安心して暮らし続けやすくなります。



