こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。
訪問看護ステーションの開業をお考えの皆様にとって、事業計画書の作成は成功への第一歩です。
実現性の高い事業計画書を用意できれば、経営の道筋が明確になり、融資の獲得にも有利に働きます。
そこで今回のコラムでは、訪問看護ステーションの事業計画書作成のポイントを詳しくご紹介します。
目次
訪問看護ステーション開業における事業計画書の重要性
事業計画書とは、事業のターゲットやサービス内容、コンセプト、想定される利益や経費などを取りまとめた書類です。
事業計画書を作成する理由は主に2つあります。
1つ目は、事業が持続可能かどうかを客観的に評価するためです。
事業計画書には収支見込みや売上・経費の計算根拠を記入するため、予定しているサービスが経営として継続できるか予測を立てられます。
2つ目は、金融機関からの資金調達のためです。
訪問看護の開業には、事務所費用や備品購入などの初期投資が必要となります。
金融機関は、借り手が問題なく返済できる見込みがあるかを判断してから融資を決定します。
「この地域は高齢者が多いからビジネスチャンスがある」といった曖昧な説明では、融資を受けることは難しく、その根拠と見込みを事業計画書でしっかり示す必要があるのです。
訪問看護ステーションの事業計画書に記載すべき内容
事業計画書に記載すべき内容は大きく8項目あります。
ここでは項目別に解説します。
①創業の動機・目的
訪問看護ステーションを立ち上げようと考えた背景や目標を記述します。
「地域内で在宅療養を希望する方が増えているものの、訪問看護の提供体制が不十分である」など、具体的な状況に基づいた説明が効果的です。
単なる事実の列挙ではなく、開業への思いや背景を織り交ぜることで、より伝わりやすくなります。
②経営者の職歴・事業実績
経営者の経歴や過去の業績について記述します。
訪問看護に関連する資格や経験を中心に記載し、事業内容とどのように結びつくか、どのような経験を積んで開業を決意したのかを説明します。
開業の動機や目標が過去の職務経験と関連していれば、説得力が高まります。
③取扱商品・サービス
提供予定のサービス内容を詳細に記述します。
まず「訪問看護事業」と明記した上で、事業所の特色やアピールポイントを追加しましょう。
周辺の競合状況にも言及しながら、想定する利用者像、提供するサービス内容、具体的な経営方針を記載します。
例えば、精神科訪問看護を提供するのか、小児対応が可能かどうか、営業時間、休日対応の有無、緊急時の体制などを明示すると良いでしょう。
事業所の特色やサービス理念も盛り込むことで、差別化を図りましょう。
④取引先・取引関係
訪問看護における主な収入源は、利用者個人からの自己負担分と、介護保険・医療保険からの報酬です。
これらの費用がいつ回収できるのかについてもきちんと計画し、言及すると良いでしょう。
資金回収の時期は、人件費支払いなどの運営にも影響します。
スタッフの給与支払いサイクルについても触れておくと、より具体的な計画になります。
⑤従業員
どのような人材を何名雇用するのか詳細に記載します。
訪問看護ステーションの基準では、常勤換算で2.5人以上(そのうち1名は常勤)の看護職員の配置が必要とされています。
サービス内容や人員体制によって必要な職員数は変わってきますので、現実的な人員計画を立てましょう。
将来的な事業拡大も視野に入れた人材確保の見通しについても触れると良いでしょう。
訪問看護ステーションの開設基準については、こちらもあわせてご覧ください。
⑥借入の状況
既に何らかの借入金がある場合に記述します。
信用を損なわないよう、借入状況は漏れなく正確に記載することが大切です。
住宅ローンや車のローンだけでなく、消費者金融や個人からの借り入れも含め、借入金額、借入目的、現在の残高、年間の返済予定額を記載します。
⑦必要な資金と調達方法
開業から収益が安定するまでの期間、どのような用途にいくらの資金が必要になるかを記述します。
事業計画書を基に資金調達を行う場合は、必要経費を正確に見積もることが重要です。
訪問看護ステーションの開業・運営に必要な資金としては、開業準備の初期費用と最低でも数カ月分の運転資金を見積もっておくことが推奨されています。
⑧事業の見通しと収支見込
借入金を計画通りに返済でき、事業として利益を生み出せることを説明する項目です。
事業の安定性を証明するためには、計画の各項目に対して根拠となる数値を示すことが重要です。
開業初年度と翌年以降の収支見込みや予算を作成し、中長期的な計画を立てましょう。
売上見込みは、できるだけ現実的な予測を立てることが大切です。
特に最初の期間は利用者獲得に時間がかかることを考慮し、季節変動や営業日数なども勘案した計画を立てましょう。
経費は、人件費、事務所賃料、借入返済額、税金、その他経費(備品費、水道光熱費など)に分けて詳細に記述します。
項目ごとに細かく記載することで、見込み利益とのバランスや支出の妥当性が評価者に伝わりやすくなります。
事業計画書作成時の注意点と成功のためのポイント
事業計画書を効果的に作成するためのポイントをご紹介します。
6W2Hを意識して作成する
事業計画書は6W2Hの考え方を活用すると、より整理された内容になります。
いつ、どこで、誰が、誰に、何を、なぜ(6W)、どのように、いくらかけて(2H)行うのかを明確にすると、計画の骨子を形作ることができます。
根拠に基づいて具体的に記載する
事業計画は具体的かつ根拠を持って記載することが重要です。
漠然とした内容では説得力がなく、融資審査などで不利になる可能性があります。
計画書を読んだ人が具体的にイメージできるよう、わかりやすく記述しましょう。
適切な根拠を示しながら計画を立案することで信頼性が高まります。
ただし、あまりに詳細すぎて資料が膨大になりすぎないよう、バランスを取ることも大切です。
テンプレートやサンプルを活用する
事業計画書は、業種ごとに記載すべきポイントが異なります。
必要事項を漏れなく記載するためには、既存のテンプレートやサンプルを参考にするのが効率的です。
金融機関のウェブサイトなどで、事業計画書のフォーマットを無料でダウンロードできる場合もあります。
訪問看護の事業計画書はポイントを押さえて作成しよう
訪問看護ステーションの事業計画書は、事業の継続性と安定性を示すための重要な書類です。
金融機関への融資申し込みの際にも求められます。
創業の動機や目的、経営者の経歴、提供するサービス内容、必要な資金と調達方法などを具体的に記載しましょう。
事業の見通しでは、計画内容に対して根拠のある数値を記載することが重要です。
計画作成の際は、6W2Hの考え方を活用し、根拠に基づいて具体的に記載することで、説得力のある事業計画書を作成できます。
テンプレートやサンプルも適宜参考にしながら、自分の事業に合わせた内容にカスタマイズしましょう。