訪問看護で働く

2025.09.24

訪問看護で複数名訪問が必要な理由とは?複数名訪問看護加算も詳しく解説

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訪問看護

こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの安立あみです。

 

訪問看護では基本的に看護師1人で利用者様のもとを訪問しますが、状況によっては複数名での訪問が必要となる場面があります。

 

複数名で訪問する場合には、一定の要件を満たす場合に加算を算定することができますが、算定要件は保険の種類によって異なるため、正しい理解が重要です。

 

今回のコラムでは、訪問看護で複数名訪問が必要となる理由から、加算の種類と算定要件、注意点まで詳しく解説いたします。

この記事を書いた人

一般社団法人SOY 訪問看護ステーション管理者安立 あみ

外科病棟を中心に約20年に渡り急性期医療に携わり、検査、処置、入院・手術を含む急変への対応を経験。
病院ばかりではなく在宅医療の重要性を実感するに至り、訪問看護に携わることを決意。
以来、訪問看護ステーションにおいて利用者とご家族のケア並びに従事する看護師の育成とサポートを行なっています。

訪問看護の現場では、一人の看護師だけでは対応が難しい場面に出会うことがあります。
吸引や点滴といった医療処置の際に安全確認が必要な場合や、体位保持と処置を同時に行う場面などです。
そうしたときに実施されるのが「複数名訪問」。利用者の安全やご家族の安心を守るために、二人以上で訪問する体制が整えられています。
複数名訪問には「複数名訪問看護加算」という仕組みもあり、医学的に必要と判断された場合に算定されます。

このコラムが、訪問看護における複数名体制の役割を知るきっかけになればと思います。

訪問看護で複数名が訪問する必要がある場面とは?

訪問看護では基本的に看護師1人で利用者様のもとを訪問します。

しかし、状況によっては複数名での訪問が必要となる場面があります。

 

1人では身体的な介助が困難な場合

利用者様の身体状況により、看護師1人では安全にケアを提供することが難しい場合があります。

体位変換時に利用者様を支えながら処置を行う必要があるときや、体格の大きな利用者様の移乗介助などがこれに該当します。

 

このような状況では、安全性を確保するために複数名での対応が求められます。

 

暴力行為や迷惑行為が認められる場合

認知症などにより、看護師に対して暴力的な行為や迷惑行為、物を壊すような行為が見られる利用者様への訪問です。

このような場合、看護師の身の安全を守りながら適切なケアを継続するため、複数名での訪問が必要になります。

 

医療処置が複雑な場合

人工呼吸器を使用している利用者様や、点滴管理、カテーテル管理など、高度な医療処置が必要な場合があります。

一人の看護師が処置に専念している間、もう一人が利用者様の状態観察や安全管理を行うことで、より安心・安全なケアを提供できます。

 

精神状態への配慮が必要な場合

精神科訪問看護において、利用者様の精神状態が不安定で特別な配慮が必要な場合があります。

ご家族への心理的支援が並行して求められる場合にも、複数名での対応が効果的です。

 

そのほかのケース

上記のほかにも、利用者様の状況から判断して複数名での訪問が適切と認められる場合があります。

例えば、退院直後で状態が不安定な場合や、初回訪問で詳細なアセスメントが必要な場合などが含まれます。

 

 

訪問看護の複数名訪問加算も解説!

複数名での訪問看護では、要件を満たすことで加算を算定できます。

ただし、保険の種類によって算定要件・加算額が異なるため、正しく理解する必要があります。

 

介護保険における複数名訪問加算

介護保険では、複数名訪問加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があります。

 

複数名訪問加算(Ⅰ)

保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の複数名による訪問です。

  • 30分未満の場合:254単位
  • 30分以上の場合:402単位

 

複数名訪問加算(Ⅱ)

看護師等と看護補助者の組み合わせによる訪問です。

  • 30分未満の場合:201単位
  • 30分以上の場合:317単位

 

看護補助者とは、看護師等の指導の下で療養上の世話や、環境整備、看護用品・消耗品の整理整頓といった看護業務の補助を行う者を指します。

 

なお、資格要件はありませんが、秘密保持や安全等の観点から訪問看護事業所に雇用されている必要があります。

 

医療保険における複数名訪問看護加算

医療保険では、同行する職員の種類と同一建物内の人数により算定額が変わります。

 

看護師・保健師・理学療法士等が同行する場合

看護師・保健師・理学療法士等が同行する場合は週1日まで算定可能です。

  • 同一建物内1〜2人:4,500円/日
  • 同一建物内3人以上:4,000円/日

 

准看護師が同行する場合

准看護師が同行する場合は週1日まで算定可能です。

  • 同一建物内1〜2人:3,800円/日
  • 同一建物内3人以上:3,400円/日

 

看護補助者が同行する場合

看護補助者が同行する場合は、「特別な管理を必要とする利用者の場合」と「その他の場合」で算定日数及び加算額が異なります。

 

【特別な管理を必要とする利用者の場合(算定日数の制限なし)】

  • 1日1回:3,000円/日(1〜2人)、2,700円/日(3人以上)
  • 1日2回:6,000円/日(1〜2人)、5,400円/日(3人以上)
  • 1日3回以上:10,000円/日(1〜2人)、9,000円/日(3人以上)

 

【その他の場合(週3日まで算定可能)】

  • 同一建物内1〜2人:3,000円/日
  • 同一建物内3人以上:2,700円/日

 

精神科訪問看護における複数名精神科訪問看護加算

精神科訪問看護は、精神障害や精神疾患を抱える患者に対する訪問看護サービスです。

保健師または看護師と他職種による訪問で算定できます。

 

看護師・保健師・作業療法士が同行する場合

看護師・保健師・作業療法士が同行する場合の加算の算定額は以下の通りです。

  • 1日1回:4,500円/日(1〜2人)、4,000円/日(3人以上)
  • 1日2回:9,000円/日(1〜2人)、8,100円/日(3人以上)
  • 1日3回以上:14,500円/日(1〜2人)、13,000円/日(3人以上)

 

看護補助者・精神保健福祉士が同行する場合

看護補助者・精神保健福祉士が同行する場合は、週1日まで算定可能です。

  • 3,000円/日(1〜2人)、2,700円/日(3人以上)

 

 

訪問看護の複数名訪問加算で気を付けること

注意

訪問看護の複数名加算を算定する際に気を付けたいポイントをご紹介します。

 

利用者・ご家族の同意が必要

複数名訪問加算を算定するには、事前に利用者様またはご家族に対して複数名で訪問することについて説明し、同意を得ることが必要です。

同意書への署名をいただく、同意を得た旨を訪問看護記録に記載するなど、同意があったことを明確に記録に残しましょう。

 

事業所都合の同行訪問は算定不可

新入職員の研修目的での同行や、事業所の都合による複数名訪問では加算は算定できません。

あくまで利用者様の状態や安全確保の観点から複数名での訪問が必要と判断される場合にのみ算定が可能です。

 

複数名訪問の必要性の記録

複数名での訪問が必要な理由を、看護記録等に明確に記載することが求められます。

「なぜ1人では対応が困難なのか」という具体的な理由を看護記録に残す必要があります。

 

精神科訪問看護での特別要件

精神科訪問看護では、主治医が複数名による訪問の必要性があると認め、精神科訪問看護指示書にその旨を記載することが必要です。

また、30分未満の訪問では算定できない点も注意が必要です。

 

訪問看護指示書については「訪問看護指示書とは?種類やチェックするべきポイントも」で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてくださいね。

 

保険種別による要件の違い

介護保険、医療保険、精神科訪問看護それぞれで算定要件や算定額が異なります。

利用者様がどの保険やサービスを使用しているか正確に把握し、適切な加算を算定することが重要です。

 

 

訪問看護で複数名訪問する理由はさまざま!注意点も押さえて対応を

訪問看護で複数名訪問が必要な理由には、身体的理由による安全確保、暴力行為への対応、医療依存度の高さ、精神的サポートなどさまざまな場面があります。

 

複数名訪問看護加算は、介護保険・医療保険・精神科訪問看護でそれぞれ異なる要件と算定額が設定されており、正しい理解と適切な算定が求められます。

 

加算を算定する際は、利用者様・ご家族からの同意取得、複数名訪問の必要性の明確な記録、事業所都合ではないことの確認など、注意すべき点を必ず守りましょう。

 

複数名での訪問は利用者様の安全確保と質の高いケア提供のための重要な仕組みです。

適切な運用により、利用者様により安心で満足いただける訪問看護サービスを提供していきましょう。

 

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