訪問看護で働く

2024.11.08

ターミナルケア(終末期看護)とは?定義や看護のポイントを紹介

facebook

x

line

手をつなぐ

こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。

 

「ターミナルケア」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

ターミナルケアとは終末期看護のことで、患者様の苦痛を和らげることを目的としています。

 

今回は、ターミナルケアについてお話します。

ターミナルケアの定義や内容、看護のポイントなどもご紹介しますので、ぜひご覧ください。

この記事を書いた人

一般社団法人SOY 訪問看護ステーション管理者大山 あみ

外科病棟を中心に約20年に渡り急性期医療に携わり、検査、処置、入院・手術を含む急変への対応を経験。
病院ばかりではなく在宅医療の重要性を実感するに至り、訪問看護に携わることを決意。
以来、訪問看護ステーションにおいて利用者とご家族のケア並びに従事する看護師の育成とサポートを行なっています。

私は訪問看護師として、また病院看護師としても、多くの患者様の終末期看護に関わってきました。
患者様の苦しみや、別れの瞬間を目の当たりにすることは、何度経験しても慣れるものではありません。
しかし、より良い終末期看護を実現するためには、患者様の終末期に真剣に向き合い、一人ひとりのニーズに応じた柔軟なケアを行うことが重要です。

終末期を迎える患者様に寄り添い、少しでも安らかな時を提供できるよう、このコラムがヒントになれば幸いです。

ターミナルケア(終末期看護)とは?

ターミナルケア(終末期看護)とは、余命が残りわずかの患者様に対し、延命ではなく身体的・精神苦痛の除去を目的とした医療・看護を行うことを指します。

ターミナルケアは一般病棟やホスピスといった病院や、介護施設、そして自宅などで行われます。

 

看護における病院と在宅の違いについては下記コラムで詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。

看護における病院と在宅の違いについて解説

 

そもそもターミナル(終末期)とは何を指すのかということですが、公益社団法人 全日本病院協会では下記の3つの条件を満たす場合を指すと定義しています。

  • 複数の医師が客観的な情報をもとに、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
  • 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師などの関係者が納得すること
  • 患者・家族・医師・看護師などの関係者が死を予測し対応を考えること

※参考:公益社団法人 全日本病院協会「終末期医療に関するガイドライン」

 

 

ターミナルケア(終末期看護)の内容

点滴

ターミナル(終末期)の際には、次のようにさまざまな身体の変化が現れます。

  • 血圧の変化:血圧低下、低下または不整、酸素飽和度(SpO2)の低下
  • 呼吸の変化:チェーンストークス呼吸、死前喘鳴(ぜんめい)、呼吸リズムの変化
  • 経口摂取の変化:食欲不振、食事量・水分摂取量の低下、嚥下障害
  • 排せつの変化:便秘、便失禁、尿量減少、尿失禁
  • 全身の変化:心機能低下、チアノーゼ出現、浮腫(ふしゅ)、腹水、臓器不全、四肢の冷感
  • 精神状態の変化:意識レベルの低下、意識混濁(こんだく)、せん妄

 

ターミナルケア(終末期看護)には、「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」があります。

 

身体的ケアは、看護師などの医療従事者が、病気による痛みの緩和や栄養補給を行います。

倦怠感や食欲不振、不眠などの症状に対し、鎮痛剤や麻酔薬などを使用して緩和します。

 

精神的ケアは、死への恐怖や不安定な精神状態を和らげるために、医療従事者と家族が協力して行います。

患者様がリラックスして日々を過ごせるように、自宅で看護を行う方も多いです。

 

社会的ケアは、治療費や相続といった経済的な不安などをケアするものです。

主に家族とソーシャルワーカーなどがケアをして、患者様の不安な気持ちを取り除きます。

 

 

ターミナルケア(終末期看護)の看護のポイント

ターミナルケア(終末期看護)の看護師の役割を、症状別にご紹介します。

 

疼痛・倦怠感

患者様に疼痛・倦怠感がある場合は、医師の指示にもとづいて薬剤投与を行います。

倦怠感の原因が薬の副作用や肝機能の低下によるものであれば、その原因に対する治療を行います。

 

体力を温存できるように、マッサージや温罨法(おんあんぽう)などを行うことも。

 

呼吸困難

呼吸困難は、肺や心臓の疾患、がんに起因しているなど、さまざまな原因が考えられます。

原因に合わせた治療のほか、酸素療法や呼吸療法を検討しましょう。

クッションなどを使用して、安楽な体位をとることも有効です。

 

食欲不振

終末期は食欲が不振になりやすいです。

食事の摂取量や血液検査データなど検査所見、精神状態などを確認しましょう。

食欲不振の原因がある場合は、医師の指示のもと、薬物を使った対症療法などを行います。

 

浮腫

リンパ浮腫の管理や体液の排出を促して浮腫を改善するために、下肢の挙上やマッサージ、保湿、足浴などを行います。

 

ただし、終末期の浮腫の改善は難しいケースが多く、患者様が精神的不安を抱えることもあるので、患者様の精神的ケアにも努めましょう。

 

腹水

腹腔内に体液が異常に貯留する腹水は、さまざまな原因が考えられますが、ケアには利尿薬を投与するケースが多いです。

腹水は呼吸困難などほかの症状が伴うことも多いため、あわせて全身のケアや精神的ケアも実施しましょう。

 

精神的苦痛

患者様は不安になりやすいです。

患者様の不安な思いを傾聴して、安心感や不安の軽減を行います。

強い不安がある場合は、抗不安薬や抗精神病薬などの投与を行うこともあります。

 

また、精神的な不安から不眠になる患者様も多いです。

マッサージなどのリラクゼーションを行なって睡眠を促したり、必要があれば薬物療法を実施したりしましょう。

 

 

ターミナルケア(終末期看護)は患者様の苦痛を緩和させるケア

ターミナルケア(終末期看護)とは、余命が残りわずかの患者様に対し、延命ではなく身体的・精神苦痛の除去を目的とした医療・看護を行うことを指します。

 

終末期は、血圧や呼吸、経口摂取など、身体にさまざまな変化が出現するため、その変化に合わせて「身体的ケア」「精神的ケア」「社会的ケア」を行います。

 

疼痛・倦怠感がある場合は医師の指示にもとづいて薬剤投与を行う、呼吸困難の場合は酸素療法や呼吸療法を行うなど、看護師は症状に合わせたさまざまなケアを行いましょう。

患者様の精神的な不安に寄り添うことも、看護師の大切な役割です。

 

facebook

X

line

SOYサポート 訪問看護ステーション