こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。
オンコール業務は、緊急時の対応が求められるため、心身ともに負担を感じやすい側面があります。
しかし、オンコールには手当がつくので、積極的に対応することで訪問看護師の給与アップにもつながります。
今回のコラムでは、訪問看護師のオンコールについて詳しく解説。
オンコールの概要や対応の流れなどの基礎知識のほか、「オンコールが大変」といわれる理由やその改善策などをお話しします。
目次
訪問看護の「オンコール」とは?
訪問看護のオンコールとは、休日や夜間といった営業時間外にも対応できるよう、待機する勤務形態のことです。
オンコール当番の日は、訪問看護師がオンコール用の携帯電話を自宅に持ち帰って待機し、利用者様からの連絡に対し、電話や訪問で対応します。
厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会(資料3)」によると、緊急時訪問看護加算の届け出をしている事業所は全体の87.8%、24時間対応体制加算の届け出をしている事業所は88.5%。
9割近くの事業所で、オンコール対応を行なっています。
オンコール体制は、事業所の規模や看護師の人数によって異なりますが、主に1人で待機・対応する「1人担当体制」と、メインとサブでの「2人担当体制」の2種類があります。
2人担当体制は2人で相談したり、電話に出られなかったときにフォローしあえたりする利点がありますが、当番回数が増えるという注意点もあります。
オンコール対応の基本的な流れ
オンコール対応は、利用者様やそのご家族からの連絡を受けて始まります。
訪問看護師は以下のステップで対応を行います。
①電話での情報収集
電話にて、以下の情報を収集、確認します。
- 利用者様の氏名
- 電話をした人の名前と利用者様との関係性(本人か、家族かなど)
- 現在の状況(例:転倒、意識状態など)
- 主な症状(発熱、呼吸苦、嘔吐など)
- 症状の発生時期
②状況判断と対応
状況を確認し、このまま電話で対応するか、訪問対応するかを判断します。
緊急性がないと判断できる場合は、電話で対応を指示し、状態が悪化した場合は再度連絡するように促します。
必要に応じて主治医へ報告したり、時間をおいて状態確認の連絡を入れたりする場合も。
緊急性が高い場合や医療処置が必要な場合は、到着予定時刻や到着までに行う対処法を伝え、利用者様の自宅へすぐに訪問します。
必要に応じて主治医への連絡や救急車の手配なども行います。
オンコールの平均的な回数
オンコールの回数は事業所によって異なりますが、1カ月に1〜5回以上というケースが多いようです。
少し古い資料になりますが、公益社団法人日本看護協会「2014年訪問看護実態調査報告書」によると、1カ月のオンコール待機回数は平均9.4回という調査結果も。
ただし、実際に出勤した回数は平均1.6回となっています。
訪問看護のオンコールの内容
訪問看護でのオンコールの内容は、利用者様の不調から急変、医療機器のトラブルなど多岐にわたります。
①電話のみの対応例
例えば、薬を服薬中の利用者様から「朝の薬を飲み忘れてしまった!」というようなオンコール。
訪問看護師が電話で状況を確認した上で、薬剤師にも相談し、すぐに服薬するよう電話で伝えるのみで対応が終了するようなケースもあります。
②緊急訪問・救急要請の対応例
人工呼吸器を利用している利用者様のご家族から「酸素飽和度が下がり、呼吸が苦しそう」などと、夜中にオンコールが入るようなケースです。
電話にて酸素飽和度を確認し、訪問看護師がすぐに訪問、利用者様の状態を確認した結果、救急車の要請を行う…など、訪問の上救急要請が必要になるケースもあります。
訪問看護におけるオンコール対応の手当はどのくらい?
オンコール手当は、待機1回あたり1,000円~4,000円が相場です。
実際に利用者様の自宅に緊急訪問をした場合は、訪問した時間や処置に掛かった時間にもよりますが3,000円〜1万円程度を付加する事業所も多いです。
また、「平日か休日か」「日中か夜間か」では、手当額に差がある場合もあります。
休日や夜間のほうが高めに設定されている事業所が多い傾向にあります。
オンコール対応が多い訪問看護師は、平均収入がやや高い傾向もあります。
こちらのコラムでは訪問看護師の平均給与について解説していますので、ぜひご覧ください。
訪問看護のオンコール対応をストレスに感じる要因と対策
オンコール対応は、訪問看護の仕事の中でも負担になりやすい業務の一つです。
オンコール対応でストレスを感じやすい理由と、ストレスを緩和させる対策をご紹介します。
いつ呼び出しがあるかわからない緊張感
オンコール当番の日は、いつ呼び出しが来るかわからないという緊張感のなか、緊急時にいつでも対応・訪問できるよう待機していなくてはいけません。
食事中や入浴中にもオンコールがあるかもしれないと思うと気が休まらず、「オンコールに気付けなかったらどうしようと思うと、眠れない」という方も。
また、当番日は勤務日ではないものの、遠出ができない、飲酒ができないなど、自由に過ごすことが難しく、オンコール当番が続くとストレスが溜まってしまうという方もいます。
緊張感を少しでも和らげるためには、オンコール当番日には予定を入れず、できるだけ自宅でゆっくりと過ごすようにしましょう。
電話の通知音も優しい音楽に変更しておくと、必要以上に緊張しないで済みます。
緊急時の判断や対応に対するプレッシャーや不安
オンコールでは、急変などの緊急対応を1人で行わなくてはいけない場面もあります。
利用者様の命にかかわる判断をしたり、ミスなく対応したりなど、責任の重たい業務のため、プレッシャーや不安を感じることもあるでしょう。
これらの不安を軽減するには、事前の綿密な準備が重要です。
オンコール対応のマニュアルを準備し、判断基準ややるべきこと、管理者への連絡基準などを明確にすることで、適切な判断がしやすくなります。
疲労の蓄積
事業所によっては、オンコール当番の翌日に出勤があるようなシフトになっていることも。
オンコールの待機、対応、訪問などにより夜間に十分な睡眠をとれないと翌日に疲れが残り、翌日の勤務に影響が出てしまいます。
無理のない勤務シフトになるように管理者へ要望を出したり、場合によってはそういった配慮をしている事業所への転職をしたりすることも検討しましょう。
近年は多くの事業所で、オンコール翌日の勤務体制の調整や2名体制の対応、ICTを活用した効率化など、オンコールの負担軽減の取り組みを行なっています。
訪問看護の仕事内容ややりがいなど、こちらのコラムでもご紹介しています。
オンコールを含め大変なこともある仕事ですが、自分に合った職場を見つけることで自分らしく働くことができますよ。
訪問看護の仕事が合わなかったと感じる理由は?対処法を確認しよう
訪問看護のオンコールは時間外対応のために待機する勤務形態
訪問看護のオンコール業務は、休日夜間などの営業時間外に利用者様の緊急対応をするため、自宅で待機する勤務形態です。
緊急対応が求められるため負担が大きい一方で、利用者様やその家族にとっては夜間や休日も適切なケアを提供する重要な役割を担っています。
実際に緊急訪問する際のプレッシャーはもちろん、待機しているだけでも緊張感が継続するものです。
オンコールのストレスや疲労を軽減するためには、事前の準備や負担の少ない勤務体制作りなどが重要。
協力し合って負担を最小限にしながら、やりがいを持って働ける環境づくりが望まれます。