こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。
訪問看護において、日々のケアはもちろん大切ですが、それを正確に記録し報告することも同様に重要です。
特に訪問看護報告書は、利用者様の状態や提供したケアの情報を主治医やケアマネジャーに伝える重要な役割を持っています。
今回は、訪問看護報告書の基本的な役割や目的から、記載項目、効率的な作成方法までを詳しく解説します。
日々の業務に追われる中でも、質の高い報告書を効率良く作成するためのヒントをお伝えします。
訪問看護報告書とは?基本を理解しよう
訪問看護報告書は、利用者様の病状や実施したケア内容を主治医やケアマネジャーに報告するための重要な書類です。
利用者様の状態や健康状態の変化、訪問看護で実施したケア内容、家庭での介護状況などを記録し、主治医に提出することで、利用者様への適切な医療提供に役立てるものです。
主治医は訪問看護報告書に記載された情報をもとに、利用者様の容態を把握し、次の訪問看護指示書の内容を検討します。
そのため、適切なケアを実現するために非常に重要な書類といえるでしょう。
なお、ケアマネジャーへの提出は義務付けられているものではありませんが、情報共有のためにも提出するのが望ましいとされています。
訪問看護報告書の情報をもとに、ケアプランの見直しなどを行う場合があります。
訪問看護報告書と訪問看護計画書の違い
訪問看護報告書と混同されやすいのが訪問看護計画書です。
訪問看護計画書は、主治医からの指示に基づいて今後提供する看護内容を計画するものであるのに対し、訪問看護報告書は実際に行なったケアの内容や利用者様の状態を報告するものです。
計画と実施結果の報告という関係性にあり、両者は常にセットで考える必要があります。
訪問看護計画書に沿って提供したケアの結果を訪問看護報告書に記載することで、計画の見直しにも役立ちます。
訪問看護報告書はいつ作成する?
訪問看護報告書の作成頻度について、厚生労働省からは「定期的に提出しなければならない」という通達のみで、明確な頻度は定められていません。
しかし、情報共有を密に行うという観点から、一般的には月に1回のペースで作成・提出することが望ましいとされています。
訪問看護報告書は、毎月15日ごろから余裕を持って作成を開始することをおすすめします。
月末は訪問看護報告書の作成以外にもさまざまな業務が発生します。月末には最終チェックや少しの修正を行う程度にするのが良いでしょう。
訪問看護報告書の保管期間
訪問看護報告書を含む訪問看護の提供に関する各種記録は、法令により2年間保管することが定められています。
万が一のトラブル発生時にも対応できるよう、適切に保管しておくことが重要です。
訪問看護報告書の基本構成と書き方のコツ
訪問看護報告書には、いくつかの基本的な記載項目があります。
それぞれの項目をどのように記載すれば良いのか、具体的に見ていきましょう。
1. 利用者情報
利用者様の氏名、生年月日、年齢、住所、要介護認定の状況を記入します。
正確な情報を記載し、変更があった場合は速やかに更新しましょう。
2. 訪問日
訪問した日付を記載します。
看護師が訪問した日は◯、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問した日は◇など、専門職種によって記号を使い分けます。
3. 病状の経過
利用者様の病状の経過や日常生活動作の状況を記載します。
単に「変わりなし」とするのではなく、具体的な状態や変化を記録することが重要です。
バイタルサインなどの客観的データも含めると良いでしょう。
【記載する内容例】
- バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、酸素飽和度など)測定結果
- 慢性疾患の状態(例:留置カテーテルの状況、排泄量など)
- 前回からの変化(改善点や悪化した点)
- 実施している医療処置とその頻度
- 服薬状況と管理方法
- 全体的な体調の評価と今後の支援方針
4.看護・リハビリテーションの内容
実施したケア内容やリハビリの内容を具体的に記載します。
箇条書きで簡潔にまとめるとわかりやすくなります。
5. 家庭での介護の状況
家族が行なっている介護の状況や介護者の状態を記載します。
介護者の疲労感などの心理面も含め、家庭環境全体を捉えた記述を心がけましょう。
6.衛生材料等の使用量及び使用状況
処置などで使用した衛生材料(ガーゼや絆創膏、輸液セット、延長チューブなど)の名称や使用量、交換頻度を記載します。
7.衛生材料等の種類・量の変更
衛生材料の種類やサイズ、量の変更が必要な場合に記載します。
8. 情報提供
訪問看護情報提供療養費にかかる情報提供を行なった場合、情報提供先と日付を記載します。
9. 特記すべき事項
上記項目で記載できなかった重要事項や緊急訪問の理由などを記載します。
特に報告すべき事項がない場合は空欄でかまいません。
10.記載日・署名
報告書を作成した日付と、事業所名、管理者名を記入・捺印します。
訪問看護報告書を作成する際の注意点と効率化の工夫
訪問看護報告書の作成には注意すべきポイントがあります。
また、訪問看護報告書の作成には時間がかかるため、効率化のポイントも知っておくと良いでしょう。
作成時の注意点
訪問看護報告書は、利用者様の現状や変化を正しく伝えるための重要な書類です。
作成にあたっては次の3つの点に気をつけましょう。
重要点を中心に簡潔な文章を心がける
報告書を読む相手は診療に忙しい医師です。
限られた時間の中で重要な情報を的確に伝えるため、要点を押さえた記述を心がけましょう。
専門用語を適切に使いながらも、理解しやすい表現で情報を過不足なく伝えることが大切です。
健康状態の推移を明確に伝える
利用者様の健康状態において、維持されている点と変化した点を区別して記載します。
健康状態に変化が見られた場合は、その発生時期、具体的な症状や兆候、看護師としてどのように対応したかという流れを意識して記録しましょう。
専門的な観察からの気づきを記録する
訪問看護師は専門的な視点から利用者様の状態を定期的に観察できる立場にあります。
生活環境や日常の微細な変化、コミュニケーションから察知できる心理状態など、専門職として得た観察結果や気づきを具体的に記載することで、医師の診療判断に貢献できます。
効率化のための工夫
訪問看護報告書の作成には思わぬ時間がかかることも多いです。
作成の要点を押さえ、業務内で効率良く作成できるようにしましょう。
記録・管理システムの導入
多くの訪問看護ステーションでは、書類作成の効率化のために電子カルテシステムを導入しています。
システムを活用することで、情報の一元管理や過去の記録の参照が容易になり、作成時間を短縮できます。
頻出文例の事前準備
病状やケア内容について、よく使用する表現や文例をあらかじめ雛形として準備しておくと効率的です。
基本的な文例を作成しておき、利用者様ごとの情報を追加・修正することで、一貫性のある報告書を迅速に作成できます。
記録作成マニュアルの活用
ステーション内で報告書作成のマニュアルを整備することで、記載基準を統一できます。
特に新人看護師にとっては、報告書作成の指針となり、業務効率の向上につながります。
マニュアルには記載例や注意点を含めると効果的です。
定期的な研修の実施
報告書作成に関する研修を定期的に行うことで、スタッフ全員の記録スキルを向上させることができます。
事例検討を通じて、より的確で効率的な記載方法を共有することが有効です。
業務フローの見直し
報告書作成のタイミングや担当者の割り当てなど、業務全体の流れを見直すことも効率化につながります。
月末に集中する作業負担を分散させるなど、組織的な工夫も検討しましょう。
訪問看護は、利用者様のケアだけではなく、このような書類作成も大切な仕事の一つです。
訪問看護の仕事内容や魅力について知りたい方は、こちらのコラムもぜひチェックしてください!
訪問看護報告書の適切な作成が質の高いケアを支える
訪問看護報告書は、利用者様の状態や提供したケアを主治医やケアマネジャーに報告・共有するための重要な書類です。
報告書を通じて医師やケアマネジャーと情報共有することで、より適切な医療・看護の提供につながります。
作成にあたっては、簡潔で要点を押さえた記載を心がけ、特に変化があった点は明確に伝えることが大切です。
また、電子カルテの活用や雛形の作成など、効率化の工夫も取り入れることで、質を保ちながらも作成の負担を軽減できるでしょう。