訪問看護で働く

2025.05.21

訪問看護の入浴介助の基本と利用者様に喜ばれる実践方法

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介護

こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。

 

訪問看護における入浴介助は、利用者様のQOL向上に大きく貢献する重要なケアの一つです。

単なる身体の清潔維持だけでなく、健康促進や心の安らぎをもたらす大切な時間となります。

 

今回は、安全で効果的な入浴介助の方法と、実践のポイントについてご紹介します。

この記事を書いた人

一般社団法人SOY 訪問看護ステーション管理者大山 あみ

外科病棟を中心に約20年に渡り急性期医療に携わり、検査、処置、入院・手術を含む急変への対応を経験。
病院ばかりではなく在宅医療の重要性を実感するに至り、訪問看護に携わることを決意。
以来、訪問看護ステーションにおいて利用者とご家族のケア並びに従事する看護師の育成とサポートを行なっています。

訪問看護における入浴介助は、多くの看護師が最初に苦手意識を持ちやすい分野です。
私自身も、どこまで介助すれば良いのか判断に迷うことも多くあり、なかなかスムーズに行えないこともありました。

ですが、入浴介助は利用者様のQOL向上にも大きく寄与するケアの一環です。
利用者様に良い時間を提供できるよう、苦手意識をなくしていくことが大切です。

時間をかけて少しずつ慣れ、経験を積み重ねていくことで、自信をつけていきましょう!

訪問看護における入浴介助の役割と重要性

訪問看護における入浴介助は、利用者様の身体的・精神的な健康にさまざまな効果をもたらします。

 

入浴には、身体を清潔に保つだけでなく、体内の循環を良くし、代謝を活発にする効果があります。

また、温まることでリラックス効果も得られます。

特に自力での入浴が難しい方にとって、看護師による専門的な介助は安心感につながるでしょう。

 

訪問看護師は入浴前後の体調変化に注意しながら、利用者様の状態に合わせた適切な介助を行います。

 

訪問入浴との違い

訪問看護における入浴介助と、訪問入浴サービスには明確な違いがあります。

 

訪問入浴は専用の浴槽を持ち込み、看護師1名と介護職員2名の計3名のスタッフで入浴の支援を行うサービスです。

寝たきりなど自宅の浴槽での入浴が難しい方に適しています。

 

一方、訪問看護での入浴介助は、基本的に看護師1名が利用者様の自宅の浴室・浴槽を使用して入浴の支援を行います。

支援を受けながらでも浴室まで移動し入浴できる方が対象となります。

 

医療的ケアが必要な方や、入浴により体調変化のリスクがある方には看護師の専門的な観察と介入が必要になるため、訪問看護での入浴介助が選ばれることが多いです。

 

訪問看護での入浴介助が必要な利用者様

訪問看護での入浴介助が特に必要とされる利用者様には、主に以下のような状況の方がいらっしゃいます。

 

循環器・呼吸器疾患がある利用者様

入浴は循環動態に影響を及ぼします。

循環器・呼吸器疾患をお持ちの利用者様は、入浴中の状態変化に注意が必要です。

 

医療処置を受けている利用者様

ストーマや膀胱留置カテーテルなどを装着している方は、入浴時に機器の管理や感染予防のための専門的なケアが必要です。

 

そのほか、病気や障がいで立位や歩行、動作が不安定な方、認知機能の低下が見られる方なども訪問看護での入浴介助が必要となる場合があります。

 

 

訪問看護での入浴介助の流れと必要な準備

お風呂の手すり

訪問看護での入浴介助について、事前の準備から入浴後のケアまでの一連の流れをご紹介します。

各段階での適切な対応が安全で快適な入浴につながります。

 

入浴前の準備

入浴前にはまず、バイタルサインの確認を行い、入浴可能かどうかを判断します。

血圧や脈拍、体温などに異常がある場合は、入浴を中止してシャワー浴や清拭に切り替えることもあります。

 

訪問看護指示書に具体的な入浴方法が記載されるわけではありませんが、指示書の内容と利用者様の状況を総合的に判断して、入浴の計画を立てましょう。

 

入浴可能と判断したら、浴室や脱衣所の温度調整、お湯張り、着替えやタオルの準備を進めます。

訪問看護の時間は限られているため、事前にご本人やご家族に準備をお願いしておくとスムーズです。

 

また、入浴後に処置を行う場合は、必要な物品も準備しておきましょう。

自宅の浴室環境に合わせた入浴補助用具(滑り止めマット、シャワーチェア、バスボードなど)の活用も検討します。

 

脱衣から入浴まで

脱衣は、転倒リスクを考慮し、安全な場所で行います。

特にズボンを脱ぐ際にはバランスを崩しやすいので、必要に応じて椅子を用意しましょう。

脱衣後は全身の皮膚状態を観察する機会でもあります。

 

洗身・洗髪は、利用者様の自立度に合わせて行います。

できることは自分でしていただき、介助が必要な部分をサポートします。

その日の体調に合わせて介助量を調整することが大切です。

 

浴槽への出入りは特に注意が必要で、浴槽の形状や手すりの有無を確認し、安全に入浴できるよう支援します。

補助用具の活用も有効です。

 

入浴後のケア

入浴後は体の水分をふき取り、転倒に注意しながら着衣の介助を行います。

入浴後は皮膚が乾燥しやすいため、保湿ケアを行います。

 

また、入浴による発汗で水分が失われるため、適切な水分摂取を促します。

気になる症状がある場合は、入浴後のバイタルサインを測定します。

 

最後に使用した物品の片付けを行い、ケア内容を記録します。

 

 

訪問看護での入浴介助時の注意点

入浴介助を安全・快適に行うためには、いくつかの注意点があります。

利用者様の状態を常に観察しながら、リスク管理を徹底しましょう。

 

医療機器・処置部位への配慮を十分行う

医療機器を装着している利用者様の入浴介助では、機器の汚染やそれによる感染防止に注意が必要です。

 

気管カニューレを装着している場合は気管切開孔に水が入らないように気を付け、ギプスがある場合はビニール袋などで保護します。

ストーマや膀胱留置カテーテルなどの管理も適切に行い、入浴後は挿入部の消毒・保護を確実に行います。

 

何らかの異常が見られた場合は、速やかに主治医に報告し指示を仰ぎましょう。

 

ヒートショック予防を徹底する

ヒートショックとは、温度の急激な変化で血圧が大きく変動することによって、失神や心筋梗塞、脳卒中といった血管の病気などを引き起こす健康被害です。

特に冬場は浴室と脱衣所の温度差に注意が必要です。

 

予防のためには、脱衣所や浴室を事前に暖めておき、入浴前後の温度変化を緩やかにすることが大切です。

特に高齢者や心疾患のある方には十分な配慮が必要です。

 

転倒予防と安全確保をする

浴室は水や石けんで滑りやすく、転倒リスクの高い環境です。

狭い浴室での転倒は頭部打撲などの重大な事故につながる可能性があります。

 

安全確保のためには、滑り止めマットの使用、手すりの設置、シャワーチェアの活用などが効果的です。

入浴中も利用者様を見守り、必要に応じて適切な介助を行いましょう。

 

浴室からの移動時や更衣時も転倒リスクがあるため、常に見守りと介助を心がけます。

利用者様の身体状況や住環境に合わせた福祉用具の導入も検討しましょう。

 

利用者様のプライバシーと尊厳への配慮を欠かさない

入浴介助は利用者様のプライバシーに深く関わるケアです。

羞恥心に配慮し、尊厳を守る対応が求められます。

 

介助の際は、利用者様の気持ちに寄り添い、プライバシーを尊重した対応を心がけましょう。

これから行うケアの内容をわかりやすく説明し、同意を得ながら進めることも重要です。

 

入浴介助の全過程を通じて、利用者様への「言葉遣いや立ち居振る舞い」に特に気を配り、不快な思いをされないようにすることはもちろん、利用者様の尊厳を守ることが何より大切です。

 

必要以上に介助をしない

利用者様の好みや習慣を尊重し、可能な限り自立を促すことも重要です。

できることは自分でしていただき、必要な部分だけを介助することで、自信や生きがいにつながります。

 

コミュニケーションを取りながら楽しい時間を提供する

訪問看護での入浴介助は、安全に行うだけでなく、利用者様に喜ばれるケアを提供することが大切です。

入浴の時間が楽しみとなるような工夫を心がけましょう。

笑顔と温かい対応を忘れないことが、最も利用者様に喜ばれるケアのポイントです。

 

入浴は利用者様との信頼関係を深める機会ともなるため、リラックスしていただける環境をつくり、コミュニケーションを大切にしましょう。

 

訪問看護についてさらに詳しく知りたい! という方は、以下のコラムもぜひあわせてご覧ください。

訪問看護の仕事内容とは?役割ややりがいなども解説

訪問看護はきつい?理由やきついと感じた場合の対処法を紹介

 

 

訪問看護の入浴介助で利用者様に良い時間の提供を

訪問看護における入浴介助は、利用者様の身体的・精神的健康を支える重要なケアです。

安全性の確保はもちろん、個別性を重視した丁寧な対応が求められます。

 

バイタルサインの確認から始まり、入浴中の観察、そして入浴後のケアまで、一連の流れを通して看護師の専門的な知識と技術が必要となります。

医療機器の管理やヒートショック・転倒の予防など、さまざまなリスク管理も欠かせません。

 

また、何より大切なのは、利用者様の尊厳とプライバシーを守り、安心して入浴できる環境を整えることです。

 

入浴という日常のケアを通して、利用者様の生活の質を高め、笑顔を引き出せるような看護を目指していきましょう。

 

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