こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。
親の介護は突然始まることも多く、いつまで続くか見通しの立たない中で、負担や辛さを感じながら介護に直面している方も少なくありません。
今回のコラムでは、親の介護がつらいと感じたときの対処法を解説します。
親の介護がつらいと感じる原因を探り、活用できる制度や対応などをお伝えします。
目次
親の介護がつらいと感じる原因
介護者の多くが、親の介護に対して疲れやつらさを感じています。
その原因は多岐にわたりますが、主に以下の4つに分類できます。
身体的負担
介護では、歩行や食事、トイレの介助、片づけや着替えの手伝いなどが一日中何度も必要となり、介助者に大きな負担となります。
夜中に何度もトイレに付き添うなど、睡眠時間が十分に確保できないことがあったりして、慢性的な疲労状態に陥りやすくなります。
特に認知症が進行し、徘徊や昼夜逆転が見られるようになると、24時間目が離せなくなってしまいます。
精神的負担
高齢者介護は突然始まるケースが多いため、介護者は心の準備もないまま、これまでの生活が一変してしまうことがあります。
家族が要介護状態になったことに対するショックや、どうすれば良いのかわからない戸惑い、いつまで介護が続くのか先行きが見えない不安など、精神的なストレスはとても大きいものでしょう。
経済的負担
介護では、オムツなどの介護用品の購入や、バリアフリー化などの環境整備費用、介護保険サービスの利用料といった費用が発生します。
状況によってはサービス付き高齢者向け住宅やグループホームの利用を検討する必要もあり、高額な利用料が家計を圧迫する可能性もあります。
介護と仕事の両立
仕事しながらの介護では、両立の難しさに直面することもあるでしょう。
病院への付き添いや看病のために休みを取ることが増え、職場で肩身の狭い思いをしたり、仕事が滞ったりすることも。
また、仕事が終わって家に帰っても介護があるため十分に休めず、心身ともに疲労が蓄積していきます。
このような状況が続くと、仕事と介護の両方に支障をきたす可能性があります。
親の介護がつらいときに活用できる制度
介護に関する制度やサービスはさまざまありますが、ここでは「レスパイトケア」の考え方を中心に、活用できる制度について紹介したいと思います。
レスパイトケアとは、介護者を支援するサポートやサービスのことです。
介護サービスは要介護者のためだけでなく、介護者の休息を目的に利用することもできます。
長く介護を続けるためにも、介護者の心身の健康を守ることは非常に重要です。
これは介護における大切な考え方の一つであるため、家族介護者が休憩したり自分の時間を持ったりすることに罪悪感を抱く必要はありません。
介護保険サービスと介護保険外サービス、行政サービスにわけてご紹介します。
介護保険サービス
介護保険制度にもとづいて提供される介護サービスです。
要介護・要支援認定を受けた要介護者が、1〜3割の自己負担で利用できます。
要介護認定についてはこちらのコラムでも詳しくご紹介しています。
主なサービスには以下のようなものがあります。
訪問介護
ヘルパーが自宅を訪問し、排せつ・入浴・食事介助といった支援を行います。
住み慣れた自宅で介護を受けられる点が特徴です。
カテーテル管理や点滴などの医療的ケアが必要な場合は、介護保険や医療保険を使って「訪問看護」を受けることもできます。
訪問看護を利用する流れはこちらのコラムでもご紹介しています。
訪問入浴介護
ヘルパーが自宅で入浴介助を行う介護サービスです。
入浴介助は介護者にとっても負担の大きな介護のため、プロに任せることで、介護者の身体的負担を大きく軽減できます。
デイサービス
要介護者が介護施設などに通い、食事や入浴などの生活支援や機能訓練などを受ける日帰り介護サービスです。
送迎が含まれているため、家族に送迎の負担がありません。
デイサービスを利用することで、介護者が介護から解放され、自分の時間を持つことができます。
ショートステイ
介護施設などに短期間宿泊する介護サービスです。
生活支援や機能訓練、施設によっては医療的ケアも受けられます。
夜も含めて利用時間が長いため、介護者の休息(レスパイト)としての機能が大きい介護サービスです。
介護保険外サービス
公的介護保険では提供できないサービスは、企業や団体などが提供する介護保険外サービスとして利用できます。
例えば、以下のようなサービスがあります。
- ホームヘルパーによる生活援助(家族のための食事作り、墓参り・旅行の付き添いなど)
- 民間事業者による配食サービス
- トレーニングを受けたボランティアによる付き添いや安否確認
- 自宅への出張散髪
- 傾聴ボランティアや介護予防教室 など
介護保険サービスでは対応しきれない内容やニーズにも、介護保険外サービスで柔軟に対応できるケースがあります。
ただし、介護保険が適用されないため、費用は全額自己負担となることに注意が必要です。
行政サービス
市区町村ごとに、独自の高齢者支援サービスが用意されています。
例えば、以下のようなサービスがあります。
- おむつ購入費用の助成
- 電話相談窓口
- 緊急通報機器の設置 など
地域によって利用できるサービスが異なるため、自分の住む地域でどのようなサポートが受けられるか確認しましょう。
各自治体の窓口や地域包括支援センターに問い合わせ・相談することをおすすめします。
ほかにも!親の介護がつらいときの対処法
介護保険や介護サービスを活用するほか、以下のような方法もぜひ知っておいてください。
専門的なことを相談できる相手を確保する
介護に関する悩みや疑問を一人で抱え込まず、専門家に相談することが重要です。
相談先としては以下のような選択肢があります。
- 主治医
- ケアマネジャー
- 地域包括支援センター
- 介護家族の会
- 認知症専門医
- 民生委員
これらの専門家に、利用できる制度を聞いたり、つらい気持ちを相談したりすることで、適切なアドバイスや情報を得ることができます。
また、家族や兄弟で協力し、可能な部分を分担することも大切です。
一人で頑張りすぎないよう心がけましょう。
介護スキルを学ぶ
家族が介護に関する基本的なスキルを身につけておくことで、要介護者も安心でき、信頼関係も深まります。
要介護者との関係が良くなれば、在宅介護全般がスムーズになり、介護者本人の負担軽減にもつながります。
地域の介護講座や、インターネット上の動画などを活用して、介護の基本的な知識や技術を学んでみるのも良いでしょう。
自分の時間を確保する
介護サービスなどを活用しながら、自分の時間を確保し、体力回復やリフレッシュする時間を作ることが大切です。
趣味の時間を持つことや、十分な睡眠を取ることも、介護を長く続けていくためには欠かせません。
介護に専念するあまり自分自身を犠牲にしてしまっては、共倒れになってしまいます。
介護休暇・介護休業の取得
仕事をしながら介護をしている方は、介護休暇・介護休業の制度も知っておきましょう。
介護休暇は年5日(対象介護者が2名以上の場合は10日)、介護休業は対象家族1人につき3回まで、通算93日取得できます。
介護休業中は、介護保険から一定の給付金が支払われることもあります。
職場の上司や人事部門に相談し、自分の状況に合った働き方を検討してみましょう。
介護施設への入居を検討する
介護施設への入居を検討するのも一つの選択肢です。
介護施設に入所できると、家族の負担が大幅に軽減され、自分の時間も確保しやすくなります。
ただし、費用もかかりますし、要介護者にとっては生活が変わる大きな決断でもあります。
切羽詰まってからではなく、今の段階から選択肢の一つとして介護施設を調べておくことをおすすめします。
実際に見学に行くなど事前に情報を集めておくことで、いざというときに冷静な判断ができるでしょう。
親の介護がつらいときには介護保険や制度を活用しよう
いつまで続くかわからない親の介護は、身体的・精神的・経済的に負担が大きく、つらいと感じる方も多いです。
一人で抱え込まず、介護保険をはじめとした制度やサービスを活用して、負担を軽減しながら行いましょう。
休息や自分の時間を持ち、介護者自身の心身の健康を守ることも、長期的な介護を続けていく上で大切なことです。
相談できる相手を作ったり、家族で介護を分担したりしながら、自分にできる範囲で取り組んでいきましょう。
医療的ケアが必要な場合は、「訪問看護」を利用することも可能ですので、あわせて検討してみてください。