こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人SOYの大山あみです。
高齢の親の介護をされているご家族から「もう限界かもしれない」というお声をよくお聞きします。
特に介護する側も高齢者という「老老介護」の場合、身体的・精神的な負担は想像以上に大きなものです。
今回は、老老介護とは何か、その課題やリスク、そして限界を感じた時の対処法について詳しくご紹介いたします。
介護の限界を見極めるポイントや、活用できる支援サービスについても解説しますので、ご自身やご家族の状況に合わせてご参考にしていただければ幸いです。
目次
老老介護とは?課題やリスクについて
老老介護とは、介護をする側と介護を受ける側の両方が65歳以上の高齢者である状況を指します。
厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、在宅介護を行う全世帯の6割以上が老老介護、3割以上が75歳以上同士の「超老老介護」となっています。
少子高齢化や核家族化が進む中で、配偶者や兄弟などの高齢者が高齢者を介護するケースは年々増加傾向にあります。
老老介護には以下のような課題やリスクが伴います。
介護にかかる時間や負担が大きい
高齢の介護者は体力や身体機能の低下により、介護ケア作業には多くの時間と労力を要します。
例えば、入浴や着替えの介助、移動の手伝いなどの日常的なケア作業でも、介護者自身の動きが遅くなりがちです。
その結果、介護にかかる時間が長くなり、介護する側はもちろん、される側も負担を感じる状況が生まれてしまいます
特に要介護度が高くなるほど、お互いの負担は大きくなっていくでしょう。
また、老老介護の中でも特に難しいケースが「認認介護」です。
認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護する状態を意味します。
認知症の方は日常生活の記憶や判断に支障をきたすため、自分自身のケアも困難な状況で相手の介護をすることになるのです。
例えば、食事をしたことを忘れて栄養不足になったり、服薬管理ができなくなったりするリスクが生じます。
さらに火の不始末や介護放棄、時には虐待に発展するケースもあり、深刻な事態を招くこともあります。
実際に、認知症の夫の介護をする認知症の妻が、排泄介助を嫌がる夫を殺害してしまった事件も報告されています。
心身へ疲労が蓄積する
老老介護では、次のような精神的・身体的な疲労が日々蓄積していきます。
- 一人で介護をしなければならないというプレッシャーや責任感
- 要介護者の言動に対する我慢や忍耐の積み重ね
- 睡眠不足や身体的な負担による慢性的な疲労感
- 社会との接点が少なくなることによる孤立感と寂しさ
- 趣味や余暇活動ができないことによるストレスの増加とQOL(生活の質)の低下
介護に追われる生活の中で、家に閉じこもりがちになり、社会との接点が失われていくことも少なくありません。
その結果、筋力や体力が低下し、うつ状態になるリスクも高まっていきます。
共倒れのリスク
老老介護の最大のリスクは、介護者本人も倒れてしまう「共倒れ」でしょう。
介護者自身も高齢であるため、過度な介護負担がかかると、作業中の転倒でケガをしたり、体調を崩したりする可能性が高まります。
介護者が倒れてしまうと、要介護者の生活そのものが成り立たなくなり、二人とも適切なケアを受けられない、共倒れという危険な状況に陥ってしまいます。
老老介護が限界?限界を見極めるポイント
老老介護の負担が増大しているかの判断には、介護者本人に現れる体調などのサインに注意する必要があります。
限界を見極めるためにも、以下のポイントに注意しましょう。
体調や健康に影響が出ている
介護者自身の身体に次のような変化が現れたら、限界のサインかもしれません。
- 腰痛や関節痛が慢性的に続いている
- 体重の急激な減少や増加が見られる
- 持病の悪化や新たな症状が出てきた
- 疲労感がとれず、日常生活に支障が出ている
- 何度も同じ箇所を痛めている傾向がある
特に、移乗介助や入浴介助など、力を使う介護作業で腰を痛めることは珍しくないものです。
介護を続けるためには介護者自身の健康が第一となります。
身体の不調は深刻な事態を招く前に対処することが大切なポイントです。
睡眠時間が取れない
夜間のトイレ介助や体位変換などで睡眠が断続的に妨げられ、十分な休息が取れない状態が続くのは危険なサイン。
高齢者はもともと夜間に何度もトイレに行く傾向があり、介助が必要な場合は介護者も一緒に起きなければなりません。
睡眠不足が続くと判断力や体力が低下し、日中の活動にも支障をきたすようになります。
不安を感じる介護として「夜間の排泄」をあげる介護者も多く、睡眠時間が継続的に確保できないようであれば、在宅介護の限界を考える時期かもしれません。
認知症を発症しかけている
介護者自身に物忘れが増える、同じことを何度も聞く、判断力が低下するなどの症状が見られるようになったら、認知症の初期症状の可能性があります。
特に、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」は、65歳以上の約15~25%にみられるとされています。
MCIから認知症に移行するケースも多いです。
介護のストレスや孤立が認知機能の低下を加速させる可能性もありますので、早めの対処が重要です。
老老介護に限界を感じたら?
老老介護に限界を感じた場合、一人で抱え込まず、積極的に支援サービスを活用することをおすすめします。
地域の支援サービスを活用する
まずは地域の包括支援センターやケアマネジャーに相談することから始めると良いでしょう。
高齢者福祉に関するさまざまな相談に応じてくれる心強い存在です。
また、お住まいの地域によっては、見守りサービスやボランティア、配食サービスなど、生活をサポートするさまざまなサービスが提供されています。
積極的に情報を集め、活用することで介護の負担を軽減できる可能性が高まります。
介護保険サービスを検討する
介護保険サービスを利用することで、介護の負担を大幅に軽減できることをご存じでしょうか。
以下のようなサービスがあります。
- 訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行う
- 訪問看護:看護師が定期的に訪問し、医療ケアや健康管理を行う
- デイサービス: 日帰りで施設に通い、入浴や食事、レクリエーションなどを行う
- ショートステイ: 短期間、施設に宿泊して介護サービスを受けられる
特に訪問看護は、医療的なケアが必要な方に適しており、定期的な健康チェックや医療処置、服薬管理などを行います。
介護者の精神的な支えにもなるため、ぜひご検討ください。
訪問看護の利用方法や手続きについて、こちらのコラムでご紹介しております。
施設入居を検討する
在宅介護が難しい場合は、介護施設への入居も選択肢の一つとして検討しましょう。
主な施設には次のようなものがあります。
- 特別養護老人ホーム:比較的費用が抑えられる公的な介護施設。待機期間が長い傾向がある
- 介護付き有料老人ホーム: 24時間スタッフが常駐し、手厚い介護サービスを受けられる施設
- サービス付き高齢者向け住宅: 生活支援サービスを受けながら、自立した生活を送れる住宅タイプ
- グループホーム:認知症の方が少人数で共同生活を送る施設
施設選びでは、要介護者の状態や希望、経済状況などを考慮して最適な選択をすることが大切です。
早めに見学や相談をして、入居の準備を進めておくことをおすすめします。
介護の負担を軽減するための制度や対処法について、詳しく知りたい方はこちらのコラムもぜひ参考にしてみてください。
老老介護の限界を見極めて早い段階で支援を受けよう
介護する側も介護される側も高齢者である老老介護の状況では、共倒れのリスクが常に存在しています。
身体に不調が現れたり、睡眠不足が続いたり、認知機能の低下が見られるようになったりしたら、それは老老介護の限界のサインかもしれません。
一人で抱え込まず、地域の支援サービスや介護保険サービスを積極的に活用しましょう。
特に訪問看護などの専門的なサービスは、医療面での安心にもつながる大きな支えとなります。
また、在宅介護が難しくなった場合は、施設入居という選択肢も視野に入れることが大切です。
「限界」と感じることは決して恥ずかしいことではなく、むしろ次のステップに進むための重要なサインといえるでしょう。
介護者自身の健康を守りながら、要介護者にとっても適切なケアを受けられる環境を整えることが、双方の生活の安定と幸せにつながります。