こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。
サービスを提供する仕事は、利用者様からクレームが寄せられたり、行き過ぎたクレームであるカスハラ(カスタマーハラスメント)という問題に直面したりすることがあります。
それは訪問看護も同じです。
そこで今回は、訪問看護におけるクレーム対応についてお話します。
クレーム内容や対処法、予防策などもご紹介しますので、ぜひご覧ください。
目次
訪問看護へのクレーム内容とは?原因も解説
訪問看護ステーションでは、クレームが発生した際の対応について、事務所に掲示する義務があります。
訪問看護に寄せられるクレームには、次のようなものがあります。
- 期待したサービスではない
- 実施内容と利用料金が釣り合わない
- 態度が悪い
- 理解してくれない
これらのクレームは、利用者様の欲求が満たされていないため発生することがあります。
例えば、「期待したサービスではない」というクレームは適切な医療を提供してほしいという欲求が原因の可能性があります。
また、「実施内容と利用料金が釣り合わない」はお金を払っているのだから何かしてほしい、「態度が悪い」「理解してくれない」は時間をかけて大切に接してほしいという欲求からきている場合もあるでしょう。
訪問看護がきついといわれる理由の一つに、「利用者様やご家族の対応」があります。
詳しくは下記コラムでご紹介していますので、あわせてご覧ください。
行き過ぎたクレームは「カスハラ」にも該当
昨今あらゆる事業において「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という問題が噴出しています。
カスハラからスタッフを守るという観点から企業の本気度が試されるところに来ているように感じますが、「訪問看護」においても同様の事態が起こっています。
残念ながら利用者様やご家族全員が、看護師や事業所の職員に対して好意的な対応をとってくださるかといえば、決してそうではありません。
行き過ぎたクレームからカスハラに発展する「対応が難しい利用者様およびご家族」の定義は、「身勝手な要望を押し付ける」「言葉使いや態度においても横柄である」「脅迫的である」など、常識では考えられない方を指しているものと捉えています。
どんなに看護師がマナーに気をつけていても、クレームやカスハラが発生する場合もあるのです。
訪問看護でのマナーについては、下記コラムもあわせてご覧ください。
訪問看護へのクレーム対応を確認しておこう
訪問看護へのクレームやカスハラがあった場合は、まずは実態を把握して、問題解決に向けて適切に対処することが重要です。
実態把握の手順
実態把握の手順は次のとおりです。
- 病気による影響を確認する
- 契約時の説明と契約後の言動、行動にズレなどがないか詳しく確認する
- どのようなクレーム・ハラスメントを受けたのか正確に共有する
詳しく解説します。
①病気による影響を確認する
気難しさや攻撃的な性格は、精神疾患の境界性パーソナリティ障害、脳梗塞による後遺症などの病気が原因であることもあります。
病気に応じた関わり方について看護師間でディスカッションし、情報を共有した上で対応しなければなりません。
②契約時の説明と契約後の言動、行動にズレなどがないか詳しく確認する
何を求められ、何をどのように提供すると約束したのか、そしてそれがチーム全体で守られているのか、今一度確認する必要があります。
初回訪問の前にしっかりとした「カンファレンス」を行い、利用者様が求めていることを正しく認識し、チーム内でズレが生じないようにすることが大切です。
技術はもちろんのこと、特に「温かい対応」を希望なさる利用者様は、看護師の「言葉遣い」にいらだったり、失望したり、怒りを覚えたりすることがあります。
デリケートな分だけ爆発したときに止まらなくなってしまう方もおられます。
雑な看護師の対応が気に入らなくても、家族のため、費用のために我慢しておられる場合もあるということも視野に入れておかねばなりません。
③どのようなクレーム・ハラスメントを受けたのか正確に共有する
伝えられたクレームや受けたハラスメントは「こんな感じの…」といった抽象的なものとしてではなく、正確に記録する風土形成が大切です。
決して感情的にならず、5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように)を使い、客観的事実を記録しチームで共有しましょう。
問題解決までの流れ
クレームが発生した時は、事業所で作成してある「利用者から苦情を処理するために講ずる措置の概要」に沿って対応しましょう。
各事業所ごとに決めた苦情受付責任者が中心となり、事業所全体で解決に取り組みましょう。
話し合いの余地があると判断した場合
話し合いの余地があると判断した場合の対処法は次のとおりです。
- 自分たちにエラーがなかったか(技術、言動、行動)冷静に検証する(あれば修正する)
- 今以上にできることがないか冷静に判断する(あれば内容を整理する)
- 上席を伴い話し合いの席を設ける(お会いできたらご提案と利用者様への要望をお伝えする)
- 改善の見込みがあれば次回訪問まで様子をみる(検証)
- 改善の見込みがあれば契約を続行、難しければ終結の判断を行う(結論)
もし、この際に謝罪を行うのであれば、クレーム内容に沿って具体的に謝罪します。
利用者様やご家族がどんな不満を持っているかしっかり傾聴し、その原因を解決する方法をともに考えることも大切です。
この際は、自己防衛の言葉は避け、利用者様やご家族のクレームに共感や理解を示すように接することで、解決に向けた話し合いができるでしょう。
もちろん、利用者様の要望や希望を全て聞き入れることができないこともあります。
その場合には、「なぜ応えることができないのか」「応えるためにどのような取り組みをしたのか」「どこまでなら応えることができるのか」の3点について明確にし、丁寧に伝える必要があるでしょう。
話し合いの余地がないと判断した場合
話し合いの余地がないと判断した場合の対処法は次のとおりです。
- 上席から利用者様またはご家族に契約解除の申し出を丁重に行う
- 利用者様またはご家族に理由を添えて契約解除の通知を行う
- 全容を記録し、事業所内に機密書類として保管する
「契約解除」の判断に至ることもありますが、最後まで望ましい関係構築のための努力を怠らないことが大前提です。
答えを導き出すにも忘れてはならないのが、「私たちは利用者様やご家族とどう約束したか」「そして実務において私たちはどうであったか」ということ。
そこに絶対の自信が必要だと思います。
組織としては、意識する・関与する・協議する・改善するということを繰り返しながら、このような問題が起こりにくい風土形成につなげていくべきだと考えています。
訪問看護へのクレームが起きた際の考え方
自分たちに非があった場合のクレームや話し合いによって改善できるクレームの場合は、問題に真摯に向き合い、解決を目指していくことになるでしょう。
しかし、行き過ぎたクレーム(カスハラ)が発生した場合、仕事と割り切りたくても、心が壊れそうになり、ついには感情が爆発しそうなときもあると思います。
また、自分は悪くないのに「自責の念」にとらわれ、現実から逃げ出してしまいたくなったりすることもあるかもしれません。
もちろん、どんな仕事でも人と交わるということは「違う考え方」に出くわすということにつながっています。
良い意味でも悪い意味でも人との接触が続く限り、ときにうれしかったり悲しかったりと、さまざまな出来事が起こります。
一生懸命やっても、全ての人に対して好意的に受け止められるわけではなく、相性もあれば、利用者様やご家族の健康状態や精神的コンディションも一様ではありません。
利用者様やご家族との間に問題が生じた際は即刻関係者で情報を共有し、みんなで「適切な方策」について議論し導き出された答を実行すれば良いだけです。
それでもどうにもできないときは、責任者など上司が利用者様に連絡し、訪問看護サービスの利用をお断りするという必要もあるでしょう。
「対応が難しい利用者様やご家族とどう関わるのか」ということを公正に受け止めるためには、「自分たちが提供している訪問看護というサービスが利用者様やご家族に及第点を得られるレベルに達しているのか」「そして継続できているのか」という点を考えなければいけません。
行き過ぎたクレームに自分を責める必要はありませんが、誤って被害者意識を膨らませるようなことなく、この問題と向かい合っていく必要はあるでしょう。
訪問看護へのクレーム対応は事前の対策も大切
クレームを生まないためには、次のような予防策が有効です。
- マニュアルを作成し、クレームに対応する体制を整える
- 相手によって態度を変えない
- クレーム内容を残しておく
まず、クレームにどう対応すれば良いかを記載したマニュアルを作成し、スタッフが実施できるような体制を整えましょう。
クレームによって業務が滞ることがないよう、スムーズに対応できる体制づくりが重要です。
そして、相手によって態度や言動を変えることなく、誰に対しても同じように接することで、クレームの発生を抑えることができます。
スタッフによって態度が変わることがないよう、どのように接するかを統一しておくことも大切ですよ。
クレームが発生した場合は、クレーム内容を記録して残しておきましょう。
そうすることで、同じクレームが起きないように対策をとることができたり、マニュアルの更新にも役立ちます。
SOYでの訪問看護へのクレーム対策と考え方
訪問看護において、「対価をいただいているから、困った利用者様やご家族に対してもへり下って対応する」という必要はありません。
看護技術ならびに挨拶や全ての立ち居振る舞いを含むコミュニケーション能力において、利用者様ならびにご家族から常に及第点を得られているのか、現場で正しく実践できているのか「客観的な自己評価」をしましょう。
一つの例として、お世話になった方に「ありがとう」を口にしたとします。
冷たい表情で目も合わせずに発した「ありがとう」と、相手の目をみて微笑みながら発した「ありがとう」では、全く違う印象となり相手に届くことでしょう。
「ありがとう」と確かに言ったのだから同じ評価を得られるということではなく、どのように発した(お伝えしたか)かが大切であることは言うまでもありません。
自身の有様によって相手の態度が変化するのは当然のことだと思うのです。
体調が悪かろうと精神的に落ち込んでいようと、逆に良いことがあり浮かれ気分で油断していようと、訪問看護に限らず、常に安定した様相で仕事に取り組むことが重要です。
当然のことながら、訪問看護で看護師が受ける「カスハラ」に分類されるべき事象も、近年問題になっている「煽り運転」も、どのような理由があれ決して許されるものではありません。
ただし、この両方にいえることとして、カスハラの問題に関しても、全くもって「被害者に非がない酷いもの」もあれば、「被害者が自ら加害者を引き込んでしまったと受け取れる原因シーン」に出くわすこともあります。
だからこそ大切なことは、無意識に「原因を作らない」「誘発しない」「きっかけを作らない」こと。
自分たちが自分たちに与えている評価と他者から与えられる評価が良い意味で一致することが望ましいと考えます。
そのために私たち訪問看護に携わる者は何をどのようしたら良いか、その答えはきっと「実務(技術力およびコミュニケーション能力)の精度を上げること」に行き着くのだと思います。
訪問介護でのクレーム対応には実態の把握と共有が大切
訪問看護に寄せられるクレームには、「期待したサービスではない」「実施内容と利用料金が釣り合わない」「態度が悪い」「理解してくれない」などがあります。
これらのクレームは、利用者様の欲求が満たされていないため発生することがあります。
訪問看護へのクレームやカスハラがあった場合は、まずは実態を把握して、問題解決に向けて適切に対処することが重要です。
実態把握の手順は、①病気による影響を確認する、②契約時の説明と契約後の言動、行動にズレなどがないか詳しく確認する、③どのようなクレーム・ハラスメントを受けたのか正確に共有する、という流れです。
クレームが発生した時は、事業所で作成してある「利用者から苦情を処理するために講ずる措置の概要」に沿って対応しましょう。
各事業所ごとに決めた苦情受付責任者が中心となり、事業所全体で解決に取り組みましょう。
クレームを回避するためにも、「マニュアルを作成してクレームに対応する体制を整える」「相手によって態度を変えない」「クレーム内容を残しておく」といった予防策を講じましょう。
そして、クレーム対策として大切なことは、無意識に「原因を作らない」「誘発しない」「きっかけを作らない」ことです。
自分たちが自分たちに与えている評価と他者から与えられる評価が良い意味で一致することが望ましいでしょう。
そのためにも私たち訪問看護に携わる者は、「実務(技術力およびコミュニケーション能力)の精度を上げること」が重要になっていくのです。