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2025.05.14

在宅医療のメリット・デメリットとは?利用前に知っておきたい基礎知識

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在宅医療

こんにちは。利用者様・ご家族に喜ばれ信頼される訪問看護ステーションをつくる一般社団法人 SOYの大山あみです。

 

近年、自宅で医療を受けたいという方が増えています。

 

しかし「在宅医療って具体的にどんなサービス?」「家族の負担は大きいの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回のコラムでは、在宅医療のメリット・デメリットについて詳しく解説し、ご検討されている方の不安解消をお手伝いします。

この記事を書いた人

一般社団法人SOY 訪問看護ステーション管理者大山 あみ

外科病棟を中心に約20年に渡り急性期医療に携わり、検査、処置、入院・手術を含む急変への対応を経験。
病院ばかりではなく在宅医療の重要性を実感するに至り、訪問看護に携わることを決意。
以来、訪問看護ステーションにおいて利用者とご家族のケア並びに従事する看護師の育成とサポートを行なっています。

近年、在宅医療の需要が高まってきています。
自宅で過ごすことができるという安心感が、患者様にとって大きな支えになっていることを感じます。

しかし、在宅医療を選択する際には、メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解した上で判断することが大切です。

在宅医療の理解を深めるきっかけとして、ぜひ今回のコラムをご活用いただけたらと思います。

在宅医療とは?受けられるサービスや対象者を解説

在宅医療とは、病院や診療所に通院することが困難な方に対して、医師や看護師などの医療従事者がご自宅を訪問し、必要な医療サービスを提供することです。

近年は「入院から在宅療養への円滑な移行の促進」を目的とした取り組みが進められており、住み慣れた環境での療養を望む方々をサポートする重要な医療の形となっています。

 

在宅医療には「往診」と「在宅診療(訪問診療)」の2つがあります。

 

往診は患者様やそのご家族の診療の求めに応じて、医師が突発的に訪問するものです。

一方、在宅診療は計画的な医学管理のもと、定期的に訪問して診療を行うものです。

どちらも通院が難しい患者様が対象です。

 

【在宅医療で受けられる主なサービス】

  • 医師による訪問診療・往診
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 訪問薬剤管理指導
  • 訪問歯科診療
  • 訪問栄養指導

 

特に訪問看護は在宅医療の中心的なサービスの一つです。

訪問看護では、看護師が定期的にご自宅を訪問し、医師の指示に基づいた医療ケアや健康管理を行います。

 

バイタルチェック、服薬管理、床ずれ予防、入浴介助、医療機器の管理など、利用者様の状態に合わせた幅広いケアを提供します。

 

【在宅医療の対象者】

  • 高齢や疾病により通院が困難な方
  • 終末期のケアを自宅で受けたい方
  • 医療的ケアが必要な障がいのある方
  • 退院後も継続的な医療ケアが必要な方
  • がんなどの病気で、自宅で緩和ケアが必要な方
  • 認知症や寝たきりの方
  • 自宅で医療機器の管理が必要な方

 

 

在宅医療のメリットとデメリット

在宅医療

在宅医療には、病院での治療とは異なる特徴があります。

ご自身やご家族の状況に合わせて、メリットとデメリットを慎重に検討することが大切です。

 

在宅医療のメリット

在宅医療のメリットをご紹介します。

 

1.自宅で療養できるため生活の質が向上する

自分の部屋、いつもの布団、慣れた環境での療養は、患者様のQOL(生活の質)を大きく向上させます。

住み慣れた場所で過ごすことで精神的な安定が得られ、回復を促進することもあります。

 

2. 家族と一緒に過ごせる

大切な家族との時間を確保できます。

特に終末期の方にとって、残された時間を愛する方々と過ごすことができるのは、とても重要なことです。

 

3. ストレスの軽減につながる

病院の大部屋とは違い、ほかの患者様を気にすることなく自分のペースで生活できます。

食事や入浴、テレビを見る時間なども自由に選べるため、快適に過ごせます。

 

さまざまな制約がある病院とは異なり、自宅では心から安心できる環境で過ごせるため、ストレスが軽減され、治療効果を高める可能性もあります。

 

4. 個別の希望に合わせたケアが受けられる

患者様一人ひとりの生活スタイルや希望に合わせた、オーダーメイドの医療やケアを受けることができます。

 

5. 通院による家族の負担を軽減できる

医師や看護師が自宅に来てくれるため、病院への往復が不要になります。

特に身体機能が低下している方や、移動が困難な方にとって大きなメリットです。

 

通院時の感染リスクも抑えられます。

 

6. 医療費の負担が軽減できる可能性がある

入院費や交通費などの負担が減る場合があります。

また、介護保険や医療保険を上手に活用することで、費用負担を抑えることができます。

 

在宅医療のデメリット

在宅医療には多くのメリットがある半面、デメリットもあります。

デメリットは対策が可能なこともあるので、あわせて見ていきましょう。

 

1. 家族の介護負担が大きくなる

在宅医療では家族が看護や介護を担う部分があり、身体的・精神的な負担が増加します。

 

対策としては、訪問介護サービスや短期入所サービス(ショートステイ)を併用して、家族の負担を分散させることが挙げられます。

また、家族間で介護の役割分担を明確にして、一人に負担が集中しないよう工夫することが大切です。

 

介護には備えが必要です。

こちらのコラムで将来の介護に備えてできることを解説していますので、あわせて参考にしてください。

介護に備えておくべきこととは?必要な準備なども解説

 

2.常に医療従事者がそばにいないという不安がある

病院と違い、医師や看護師が常駐していないため、緊急時の対応に不安を感じる方が多くいます。

急変時の対応が遅れる可能性もあります。

 

訪問看護を利用する場合、24時間365日対応の訪問看護ステーションを選ぶなどの対策で、緊急時のサポート体制を整えることができます。

緊急時の連絡先リストを作成し、対応手順を家族全員で共有しておくことも重要です。

 

3. 最先端の治療や検査が受けられない

自宅では、CTやMRIといった大型の精密検査機器を使用した検査や、高度な治療を受けることができません。

検査のたびに通院が必要になることもあります。

 

そのため、定期的な通院と在宅医療を組み合わせる形を検討することをおすすめします。

症状に変化があった場合は早めに医師や看護師に相談し、必要に応じて通院するなど柔軟な対応を心がけることが大切です。

 

4. 住環境の整備が必要になる

医療機器の設置や介護スペースの確保など、住環境を整える必要があります。

場合によっては大幅な改修が必要になることも。

 

対策としては、介護保険の住宅改修費支給や福祉用具レンタル制度の活用があります。

ケアマネジャーに相談することで、必要な改修やレンタル品についての適切なアドバイスを受けられます。

 

ケアマネジャーに相談できることは、こちらのコラムで詳しくご紹介しています。

ケアマネジャーに相談できることは?ケアマネジャーの探し方や選び方も

 

5. 自分で選択・判断しなければならない

病院で医療従事者が常に判断してくれる環境と異なり、在宅医療では患者様やご家族自身がさまざまな判断を迫られることがあります。

頓服薬をいつ服用するか、この程度の不調で医師に連絡をしても良いのだろうかなど、迷うケースも多くあります。

 

判断に迷った場合の対応方法を、事前に医師や看護師と十分に話し合っておくことが大切です。

質問リストを準備して、医療従事者の訪問時に気になることを全て解消するようにしましょう。

 

在宅医療を選択される際には、看取りについても考える必要があります。

下記のコラムもぜひご覧ください。

在宅看取りの流れとは?必要な準備や心構えについて知ろう

 

 

在宅医療の利用前に知っておきたい準備と費用

在宅医療を始める前には、いくつかの準備が必要です。

また、費用面についても事前に理解しておくことが大切です。

 

在宅医療利用のための準備

在宅医療を始める前にしておきたい準備についてご紹介します。

 

要介護認定の申請

介護保険でサービスを利用する場合、お住まいの市区町村の窓口で要介護認定の申請を行いましょう。

認定結果によって、利用できるサービスの範囲や自己負担額が決まります。

 

要介護認定の申請については、こちらのコラムをご覧ください。

要介護認定を受けるには?申請方法や認定までの流れを解説

 

ケアマネジャーの選定

ケアプランの作成や各種サービスの調整を行うケアマネジャーを選びましょう。

地域包括支援センターや病院の相談窓口で紹介してもらうことができます。

 

家族での話し合い

介護の役割分担や緊急時の対応など、家族間で事前に話し合っておくことが重要です。

全員が在宅医療への理解を深め、協力体制を築きましょう。

 

住環境の整備

手すりの設置、段差の解消、ベッドの配置など、安全に過ごせる環境を整えましょう。

介護保険の住宅改修費を活用できる場合もあります。

 

医療機関との連携体制の確認

かかりつけ医や訪問看護ステーションとの連絡体制、緊急時の対応方法を確認しておきましょう。

24時間対応のサービスがあるかどうかも重要なポイントです。

 

在宅医療利用にかかる費用

在宅医療の費用は、医療保険と介護保険の2つの制度によってカバーされます。

どちらの制度が適用されるかは、利用するサービスの内容や患者様の状態によって異なります

 

【医療保険でカバーされるもの】

  • 訪問診療・往診費用
  • 訪問看護費用(医療保険適用の場合)
  • 医療処置に関わる費用

 

【介護保険でカバーされるもの】

  • 訪問介護(ホームヘルプサービス)
  • 訪問看護費用(介護保険適用の場合)
  • 訪問リハビリテーション
  • 福祉用具レンタル・購入費

 

医療保険の自己負担割合は1〜3割、介護保険の自己負担割合も原則1〜3割です。

在宅医療の費用は要介護度や所得により異なりますが、入院と比較すると費用負担が抑えられる可能性があります。

 

訪問看護において、医療保険と介護保険どちらを利用することになるかは、こちらのコラムをご覧ください。

訪問看護は医療保険と介護保険のどちらが優先?違いや優先順位を解説

 

また、高額医療・高額介護合算制度を利用することで、負担が一定額を超えた場合は払い戻しを受けられることもあります。

詳しくはケアマネジャーや医療機関の相談窓口にご確認ください。

 

訪問看護や在宅看護については下記のコラムでも詳しくご紹介しています!

訪問看護とは?対象者やサービス内容、使える保険などについて解説

在宅看護と訪問看護の違いを解説!それぞれのメリット・デメリットも

 

 

在宅医療のメリット・デメリットを理解して最適な選択を

在宅医療は患者様やご家族の思いを尊重し、自宅で精神的な安定や安心、安らぎを得ながら、充実した生活を送ることができる医療の形です。

しかし一方で、家族の負担増加や緊急時の対応に不安を感じる方も多くいます。

 

どのように医療を受けるかを選択する際には、ご本人の希望や家族の状況、医療的ニーズなどを総合的に考え、判断する必要があります。

在宅医療では家族の協力が不可欠なことから、利用前には家族でしっかり話し合うことも大切な準備の一つでしょう。

 

また、在宅医療の費用には、医療保険や介護保険が使えます。

まずは、かかりつけ医やケアマネジャーに相談し、ご自身に合った在宅医療の形を見つけていきましょう。

 

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